第4話 のぞみ12号

僕が乗る「のぞみ12号東京行」は11番ホームに到着する予定だ。腕時計に目を落とすと、既に10時55分になろうとしていた。僕は特急券で自分が乗る車両番号と座席を確認した。特急券には『12号車1E』と記されている。


10時58分、のぞみ12号は自動放送と駅員さんのアナウンスの後、京都駅の11番ホームに滑り込んできた。僕はのぞみ12号の「顔」を食い入るようにみつめ、ぼそっと『700Aか』と呟いた。東海道新幹線として運用されるN700系は16両で編成され、全長は400メートルを超える。16両という車両数は、通常の旅客鉄道車両の編成において、東北新幹線のE5系はやぶさ・E 6系こまちの17両編成に続き、2番目に多いことになる。現在、京都駅にやって来るN700系は大きくN700AとN700Sに分類される。両者は非常に似ているが、いくつか違いがあり、その一つが顔(ノーズ)の部分の形状である。N700Aのノーズの形状はエアロダブルウィングと呼ばれるものだ。この形状はシミュレーション技術を駆使して設計されたそうだ。最新型のN700Sのノーズも一見エアロダブルウィングと似ているが、デュアル スプリーム ウィングと呼ばれ、若干異なる。鉄オタ以外は絶対に気づかないであろう小さな違いだが、この小さな違いにより、騒音を防ぐ能力が向上したというから実に興味深いものである。


僕はN700Sの車体の美しさに見惚れていた。しかし、ホームドアが開く音で我に帰り、一呼吸してから車内に足を踏み入れた。そして、この瞬間、僕の長い長い旅は始まったのである。


そして、この時はまだ、YouTuberを目指す僕がまさか、とんでもない出来事に巻き込まれることになるとは、夢にも思わなかった。

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