眠りの世界へゴー

 まだタオルケットを使うか、もうブランケットを出すか。


 寒さに目覚めた朝、二度寝をする余裕はある。タオルケットを肩まで掛けて瞼を閉じれば、きっとすぐに夢の世界に逆戻り。

 ……。

 …………。

 ………………寒い。

 眠いし眠れそうだけれど、『寒い』で意識が埋められていく。絶対これ、このまま寝たら寒々しい夢を視るや。それは嫌だな、あったかい夢が視たい。夏ほど暑苦しいのじゃなくて、桜の花が散る頃の気温くらいがいい。

 寒い、嫌だ。寒い、嫌だ。寒「ぷに」い……ん?

 薄く瞼を開けようとして、タオルケット越しに柔らかいものが足に触れる。

「ぷにぃ」

 柔らかい。ふわふわで、ふかふかで、徐々にあったかくなっていく。冬の日差し、いやそれ以上の温もり。

 これなら眠れそう……いやちょっと待って。

「■■■」

「ぷに!」

 名前を呼んだら、ぷにぷにと嬉しそうに鳴き声を上げて、私の顔の近くまで寄ってくる。

 一目見たかったけれど、そろそろ顔が視界に入るという所で、完全に瞼は閉じてしまった。闇。真っ暗。──頬に柔らかな温もりを感じた。

「ぷぅにぃ」

 本当はだっこして眠りたかった。

 でも、これでも十分眠れそう。

「……おやすみ、■■■」


 ぷに、なんて声を最後に、私は夢の世界へ旅立つ。


 ■■■のおかげだろう、夢で私は、それなりに燃えている暖炉の前で、可愛らしい黒猫をだっこして横になっていた。

 あったかい。

 これでよく眠れる。……いやもう眠ってるけどさ。

『ぷーにぷーに』

 黒猫はやっぱりぷにぷに鳴いている。

『あのさ、黒猫の鳴き方ってそれで合ってるの?』

 何となく訊いてみたけれど、やっぱりぷにと鳴かれただけ、詳しい説明をされることはなかった。

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