エピローグ

ガーレット国の変化

 

 私がアレンシア王国グレシア辺境伯領へ亡命してきてから数年が経過しました。


 ガーレット国からの連絡はあの手紙の後にもう一度あっただけで、それ以外には一切私の元へ来ることはありませんでした。


 あの手紙の後、数日も経たない内に来た連絡はお父さまの訃報を知らせる物でした。どうやら、リーシャがお父さまの居そうな場所を王宮関係者に知らせたらしく、その情報を元に調べたところ、お母さまのお墓の前でこと切れていたようです。


 それを聞いた時は愕然としましたが、お父さまはお母さま一筋でしたし、生きる糧と思っていても不思議ではありません。今回の事を切っ掛けにこれ以上生きる必要が無いと判断したのか、元から予定していた事なのかはわかりませんが、お父さまにとってお母さまが居ない世界でこれ以上生き続ける価値はなかったのかもしれません。


 お父さまの訃報は、お母さまが亡くなった時ほど悲しい、という気持ちにはなりませんでしたが、悲しいと思ったことに変わりありません。


 数日程、その気分を引き摺った後、アレスからお父さまのお墓が出来た際にそこへ参りに行くか、と提案されました。

 本来ならその提案に乗ってお墓参りに行くべきなのでしょうが、私はそれを退けました。


 あまり日常で関りの薄かったお父さまでしたが、私が成人する時まで育てて下さったことには変わりありません。感謝はしているのです。出来れば一度でもお墓に参る事が出来ればとも思います。

 しかし、ガーレット国があのような連絡を寄こしたという事を考えれば、最悪、墓参りの際に拘束される可能性もありそうです。さすがに力ずく、という事はないでしょうが、何らかの理由を付けて引き留めてくることが予想できます。


 そういった可能性が否定できない以上、すぐに行くことは出来ないでしょうし、行けたとしても、ガーレット国の内情が落ち着いてからになるかと思われます。



 後は、アレンシア王国とガーレット国の関係についてでしょうか。


 両国の関係はあの時から徐々に距離が出来て言った感じです。ただ、不仲になったという訳ではなく、距離が離れて行ったというよりも元の距離感に戻って行った、というのが正しいのでしょう。


 その結果、グレシア辺境伯領が接していたガーレット国側の領地へ領軍を派遣することはなくなりましたし、他の場所での協力要請の数も減ったようです。

 そのためなのか、ガーレット国の国力は多少ではありますが減少しているようですね。


 ある意味、現在のガーレット国に管理できる規模まで縮小しただけなのかもしれません。

 私のお母さまが亡くなった際に国王も亡くなっていますが、それと同時に多くの貴族の当主や令息などが亡くなっています。そのため貴族の数が大幅に減り、近々では領地の管理もあまり出来ていなかったため、アレンシア王国をはじめとした隣国へ支援を求めていた訳です。


 そのことからして、現在のガーレット国は、その手の回らなくなった領地に無理に手を出さないようにして、先に王宮の政治力の回復と、国内に居る貴族の統率を優先しているのでしょう。おそらく、それが終わりしだい元の国の形態へ戻していくのだと思います。


 とりあえず、ガーレット国の変化による影響はこちらにはないので、グレシア辺境伯家として現状は様子を見ている状態です。

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