閑話 アレンシア王国宰相とグレシア辺境伯 ※他視点

 

 少しタイミングが違いますが閑話です。

 適当なタイミングで適当な場所へ移動させます。

―――――


「ガーレット国のレミリア・オグランがグレシア辺境伯、其方の所に来ていると聞いたが、それはどういう事だ?」


 アレンシア王国の王城。その中の一室。使用人をすべて排除した上で2人の男性が話をしている。


「こちらが把握している限り、ガーレット国からの亡命、に近い形のようです」

「亡命だと?」

「はい。本人からは身に危険を感じたため、親交のある我が家へ来たようですね。こちらで軽く調べた限り、ガーレット国の王家とオグラン家の間で何かがあったことは確かなようです」

「……そうか。数年前までは王子と婚約させ聖女と言っていた者をあの国が易々と手放すとは思えぬが、どう扱うべきか」


 想定外の重要人物が亡命まがいの事をして来たことで男は頭を悩ませる。


「ただ、ガーレット国はまだレミリア・オグランがこちらへ来ていることを把握していないようです」

「それはどういうことだ?」


 上位貴族である侯爵家令嬢、しかも王族に関りを持つ人物が国境を越えたというのに、国が把握していないのはおかしい。普通に考えれば行動を監視する者や付き人などが居てもおかしくはないのだが、辺境伯の話を聞いた限りそのような者がいたという話もない。

 どう考えても不自然な亡命だ。


「さすがに私も変だと思いいくつか伝手を使い確認してみたところ、どうやらレミリア・オグランの妹であるリーシャ・オグランが第2王子と婚約したようです」

「その話は数日前に聞いたな。いきなり婚約者が変更になった理由がよくわからん。あちらの王家は何を考えているのだ?」

「私も詳しい情報を持ってはいませんが、どうやらオグラン侯爵家からの申し出であったようです」

「ふむ」

「おそらく、あちらの王家が回復魔法を使える者であれば婚約者はどちらでもいい、とでも言ったのでしょう。妹の方も使えはしますし」


 グレシア辺境伯の言葉を聞いて宰相は静かに考え込む。

 グレシア辺境伯が言った情報の最初の出所はレミリアだが、さすがにグレシア辺境伯は情報の裏取りをしている。レミリアに下手な疑惑が出ないよう、情報の出所を暈して伝えるという意図もあるが。


「まぁ、ガーレット国の政治はまだ荒れているという事だろう。深く考えたところで現状わかることは少ないだろうな。こちらが把握している情報が少なすぎる」

「そうでしょうね」

「しかし、こちらに亡命してきたというのなら取り込みたいところだが」

「王家やそれに関わる家に取り込むのは悪手でしょう。レミリア・オグランが自ら亡命して来たといっても周囲はどう見るか」


 そうなるであろうことを理解している宰相はグレシア辺境伯の言葉に返答することはない。

 数秒の沈黙の後、宰相が口を開く。


「……其方はどうするつもりなのだ?」

「本人の好きにさせる。と言いたいところですが、益を考えると他国へ行かれるのは困ります」

「そうだな」

「なので、下の息子の婚約者になる事を提案するつもりです。レミリア・オグランの母親はアレンシア王国の出身であり、我が家にも関りのある家の出です。王家に直接かかわりのある家に嫁ぐよりも当りは弱くなるでしょう。本人に選択させますが、ある程度は誘導するつもりです」

「……ガーレット国に接するグレシア辺境伯の息子というのが少々不安だが、親の繋がりから、であるならばある程度納得は出来るか」


 それでも少なくない反発がある事を理解している宰相は先の事を考え、憂いから小さく息を吐いた。


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