第7話 FランクからSランクへ

 ダンジョンから帰還してすぐ、エドワードはアトラスに向き合って言った。

「アトラス君、ぜひ我がギルドにきてほしい」

 これまで数々の強者たちとともに戦ってきたエドワードだったが、アトラスの強さには驚きを隠せなかった。そして、アトラスが入ってくれれば、ギルドはさらに繁栄すると確信した。

 だから、なんの迷いもなくアトラスに打診したのでる。

「え、ほんとですか!?」

 だが、それはアトラスにとっては予想外の結果だった。 ≪ホワイト・ナイツ≫と言えば、王国一のギルドだ。妹に勧められて受けてみたものの、まさか受かるなんて少しも思っていなかったのである。

 だが、驚くのはそれだけではなかった。

「もちろんSランクパーティの隊長職を保証する」

 エドワードの言葉に、アトラスは唖然とする。

「え、Sランクの隊長!?」

 アトラスは思わず声を裏返らせる。

(SランクってあのSランクだよな!?)

 弱小ギルドならいざ知らず、≪ホワイト・ナイツ≫はトップギルド。最高ランクの冒険者たちの集まりだ 。

(その隊長に、俺が!?)

 アトラスには≪ブラック・バインド≫での自分に対する評価がこびりついていた。だから最高のギルドから、最高の評価を得て採用されようとしている事実が信じられなかったのだ。

 だが、さらにだめ押しとばかりにエドワードは提案する。

「採用祝いで金貨10枚。初年度賞与は金貨20枚。それにダンジョン攻略で得た収入の10パーセントをインセンティブで支払う。有給も年30日付与する」

 それまでの≪ブラック・バインド≫での待遇を考えると、気が遠くなりそうなほどの高待遇だった。

「も、もちろん、お、お願いします」

 アトラスは、そう声を上ずらせながら、エドワードの申し出を受け入れたのだった。



 アトラスが自宅に帰ってくると、妹ちゃんが嬉々とした表情で出迎えてくる。

「お兄ちゃん、試験どうだった!?」

「それが……」

 アトラスはその事実を妹ちゃんに告げる。

「≪ホワイト・ナイツ≫から内定もらえた」

 アトラスはその事実をいまだに信じられないでいた。しかし、妹ちゃんは兄にそれくらいの力があると確信していたから、驚くことはなかった。

「よかった! これでブラックギルドと完璧におさらばだね!」

 妹ちゃんは興奮気味に言って、そのまま兄に抱きつく。いつもなら「恥ずかしいよ……」とかそんなことを言うところだったが、今日のアトラスは放心状態で、妹をひっぺがす余裕がなかった。

「自分でも信じられない……」

「今日はぱーっとお祝いしなきゃ!」

 そう言って妹ちゃんは、豪勢な料理を用意してあるテーブルへと兄を引っ張っていくのだった。


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