エピローグ

エッセイのすゝめ

 あとがきとして、最後に自分のことを話そうと思う。



 思い返せば、このエッセイを始めたのは一年前の夏だった。初めての長距離ツーリングの直前。正直に告白すると、エッセイを書いたのは鼓舞するためだ。

 あの時、私は怖かった。バイクで旅に出るということが不安で仕方なかったのだ。自分の退路を断つ気持ちで最初の話を書いた。たとえ誰にも読まれなくても、ネット上に公開してしまえば後戻りできない。一度誰かに読まれてしまえば、出発するしかないのだ。

 そんな風に考え、仕事の隙間に書いたのがこのエッセイの始まりだった。


 それから約9か月が経ち、このエッセイも終わりになる。最初は不安だった旅も、蓋を開けてみれば楽しくて仕方ないものだった。

 今では、「エッセイを書く」という行為も私にとっては大事なことだと思っている。せっかくなので、私がこの作品を書き、感じたことを書いて、このエッセイの〆にしようと思う。



 エッセイを書くことは思ったよりも大変なことだ。でもことと同じくらい、ことも面白い。


 エッセイを書くことには、いろいろと魅力がある。私が実感したことだけでも、例えば、ツーリングの記憶が深くなることがあります。

 ツーリングへ行って感動した、写真を撮った、とかだけでは記憶は薄れてしまうものだ。記録しただけではいずれ忘れてしまう。それがエッセイを書いてみると、強く印象に残る。一日が終わるとその日を振り返る、旅が終わってからも思い出してエッセイを書く。この行為が記憶を定着させてくれるのだ。さらに、感想を貰ったりすれば、書く気力が沸いてくるし、次の旅に出ようとも思える。



 そして、それよりもエッセイの魅力が一つある。それは、を思い出させてくれることだ。

 今の社会では、他人の人生を知る手段が多く存在する。例えば、SNSなんかでは充実した人生を演出する人々を多く見ることが出来る。そんな世界にいると、自分の人生というものが曖昧で不確かなものに思えてくることがある。しかし、エッセイを書くと少しだけ変わる。

 私は私の人生における主人公なのだ。エッセイという世界においては自分貴方自身が主人公。楽しかったことは人生の1ページになる。失敗をすれば、それも1ページ。悲しいこと、辛いこと、そんな負の感情も自分の人生そのものだ。

 その時の感情を文字にする。すると、自分が自分の人生で生きて、闘っていることが実感できる。それが「エッセイを書くこと」の一番の魅力だと、私は思う。


 だから皆さん、エッセイを書いてみてはどうだろうか。私のように、旅のことだけではなく、例えば生活の何気ない一瞬、仕事のこと、恋をしたこと、友人との飲み会の話だって面白い。どんな内容でも、貴方が自分の人生を書けば、それはエッセイとなり生活に彩りを加えてくれると、私は確信できる。


 だから、最後に伝えたいことは一つだけ。


「エッセイはいいぞ」

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初心者ライダー無計画旅日記 木村三文 @dendoro

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