梨木香歩 『西の魔女が死んだ』

 第二作目は、梨木香歩さんの小説、『西の魔女が死んだ』です。

 こちらは、もともと自分の持っていたものではなく、私の妹が読んでいた作品で、当時はそこまで興味を持っていなかったのですが、しばらく経った最近になって読んでみたいという気持ちになり、改めて自分で購入してきた作品になります。

 この作品を読む前は、題名からも明るい話ではなさそうだし、魔女と言うのが何かは分からなくても誰かしらが死ぬことになって、それを基にしてストーリーが展開されていくものだと、思っていました。

 しかし、読み切ってからとなると、最初の印象とは大きく異なっていました。

 当然、自分の思っていたような内容ではなく、あらすじとしては、都会で中学生として暮らしていた主人公のまいが、生活に疲れて山にひっそりと暮らしている祖母の所へと行き、そして祖母から様々な話を聞き、そしてそれを吸収して自分のものとすることでまいが成長していくお話です。

 そしてその祖母が西の魔女と作中で言われる存在なのですが、その彼女が死ぬことすらも必ずしも悲しいことではない、死という事は必ずしも否定的なことではないのだ、という内容になっていました。


 もちろん、死ぬという事は通常悲しいことです、それが身近な人間に起きたのであればそれは悲しいという言葉では表せず、自らの一部を喪失するかのような気になることもあるでしょう。

 しかし、生というものも嬉しいことのみではありません。

 嬉しいこと、幸せなこともあるでしょう。

 しかし、辛いこと、悲しいことももちろんあるのです。

 生と死は表裏一体、生きるからこそいずれ死は必ず訪れる、死が待っているからこそ生は美しい。

 生と死は共に尊く、決して悪いものでは無いのだ、とこの作品を読んで学ぶことが出来たと思います。

 また、作品を読み終わってあとがき、解説部を読んでいて知ったのですが、表紙のイラストにも意味をしっかりと込められていて、ただの本としてだけでなく、表紙まで全てを含めての一つの作品なのだ、という事を思い知らされました。

 とはいえ、表紙のイラストのみを見てもこの作品の本質は伝わりにくく、また中身の文だけを読んでも、イラストまで含めての感動はなかなか得られないでしょう。

 もし興味を持ってくださった方がいるのなら、是非とも文庫を購入してみて、読む前にブックカバーなどで表紙が目に入らないようにしてから小説を読み、その後に拍子を見てみてください。

 もし、表紙のイラストの意味がよく分からなかったら解説部にあるイラストの解説を読んでみて下さい。

 きっと、読み終わった頃には貴方も改めて生きるという事、そして死ぬという事について考え始めるでしょう。

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