第5話➖夜の剣も硬いか?鋭いか?
朝食を食べ終え、コーヒーを飲みながら
一息つく。それが僕の日課だ。
自分の朝はこれが無いと始まらない。
確か朝、コーヒーを飲む事で脂肪燃焼が
促進される効果があるとか、ないとか……
まぁ結局うまいから飲むんだよ!
「おい!リック、稽古の時間だぞ〜!」
とまぁ、このように僕の父こと、ジャック•シー•ペンドラゴンは、僕が朝食を食べ終わった時間を見計らい自分を呼びつける。
「ちょっと待っててください!」
いまだに僕はジャックと話す時には敬語を使ってしまう。ジャックとしては、砕けた口調で話して欲しいそうだが。
それは何故か抵抗がある。
僕は自分が転生してきた人間だと自覚しているが上に、ジャックを本当の親として見れないのだろうか?それとも、前世の僕が関係しているのだろうか……
僕は自分の身長に合わせたサイズの木刀を担ぎ、父のいる庭に向かった。
「それじゃあ始めるか!」
父は長座体前屈の姿勢から、立ち上がりそう言った。父はトレーニングの際はいつも、長髪を後ろに束ね、言わゆる、マンバンヘアーしている。
[はい!]
庭一面に響くような大きな声で自分も答えた。
貴族の屋敷なだけあって、庭も立派だ。親子がトレーニングするには十分なサイズだろう……
緑色の芝生があたり一面に広がっていて、それを囲むようにして薔薇の花が咲いている。母の趣味だろうか……
父は大きな庭を一周する様にしてランニングを始め、自分もそれに付いて行く。
一周、3キロ程度の距離を走り終えると、父の横に並び素振りを始める。
先程も言ったが、
父は貴族の当主の座に就く前は凄腕の冒険者だったらしい。
剣技はかなりの物で、人に教えるのもうまい。
イケメンで強くて地位もあるとか、誰得のパーフェクトヒューマンだよ、全く……
少々嫉妬はするが、この人が父である事を僕は素直に誇りに思う。
自分が50回の素振りを終えている頃には、
父はすでに300程度の素振りを終えている。
筋力の差もあるだろうが、
技量の違いも当然あるだろう、父の素振りは無駄がなくコンパクトだ。
そして、あの引き締まった体を見るに、きっと夜の剣技もかなりの腕前だろう…
(そっちの方はもう少し成長してから教てもらうとしよう……)
そして、僕が素振りをし終えた後も、
ジャックは得意げな顔で素振りをし続ける。きっと息子の前でいい顔をしたいのだろう……
たまに自慢げな顔でチラチラ見て来るので少しイラッとくる。
(まぁ勉強になるから、目は離さないのだが……)
それからも僕は父の素振りを眺める。
(しかし、美しいな……)
シンプルに感心する。どの世界も、本当の一流は基本的な動作が美しい物だ!
早く自分も追いつきたい。
でもまぁ、3歳児の子供にしては充分な気もするが……
計2時間程度の稽古を終え、かいた汗を風呂場で流す。着替えて風呂から出ると、
リビングで軽い食事を済ませ、書庫に向かう。
そして晩飯まで書庫で読書に時間を費やす。
この書庫には魔導書や童話、世界地図、伝記など大抵揃っている。
やはり僕の目を1番引く本は魔導書だ!。
前世には無かった概念がこの世界には複数存在していて、日常生活を魔法に頼っている。しかしその分、科学の進歩が遅い。
掃除や洗濯なども、家電製品ではなく、魔法に頼っている面がある。
しかし、魔法というワードはは前世の知識がある人間なら、誰の胸を躍らせるに違いない!
今日は日が暮れるまで魔導書を読み漁った。
「リックぅ〜!ご飯よー」
(グゥーーー)
母の呼び出しを合図に自分のお腹が鳴き声をあげる。
自分は走ってリビングに向かった。
[ギィ〜]
僕は自分用の小さいサイズの椅子を引いて、席に着き、テーブルの上を見渡した。
(今日の晩飯もいつもと同じで物凄く豪華だ!)
パン、スープ、サラダ、チキン、牛肉、豚肉、魚介類が揃っている。
母は料理が得意で、晩飯は特に腕によりをかけて作る。
「今日のご飯もとてもおいしいです!」
「あらあら嬉しいわね♪リックにそう言ってもらえるなんて、頑張った甲斐があるわね」
母に感謝を伝え、家族3人で食事をする。
「今日は各農家の収穫量を計りに行ってきたんだ!」
ジャックが上機嫌でそう言った。
「あら、今年もようやくですか?」
母が嬉しそうに応答する。
「ああ、今年は、夏野菜の収穫量が昨年より多いそうだ」
「あらあら、よかったわねぇ、リック!今年も美味しい夏野菜が沢山食べれるわよ〜」
「僕は今年も、母上の作る夏野菜のスープが食べたいです。
「じゃあリックの為に腕によりをかけて作らないとね!」
母は嬉しそうにそう答えた。
僕達はいつも通り、何気ない会話と食事を楽しんだ後、
僕は1人で寝室へ向かう。
しかし自分の部屋に行っても、やる事が無く、退屈の極みだ。
(この世界に娯楽用品が少ないのも、解決すべき課題の一つだな。)
別におもちゃで遊ぶような歳では無いけど、携帯や漫画もなければ息子も立たないから、暇でしょうがない。
大人のおもちゃのレパートリーだって前世に比べて少ないだろうし…
ジャックは夜も大忙しな事だろう……
(よし寝るか!)
夜の9児には両親の為にも早く寝る。
子供は日が出ている間だけ頑張り、親は日が沈んでからも頑張るのさ!
僕が転生してからの1日は変わらずこのようにすぎて行く。明日からも今日のような1日を送る事だろう!
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