第4話:噂

 それから数ヶ月後。桜は和希がゲイだという噂を聞いた。女性からの告白をことごとく断っていることからそんな噂が流れたらしい。


「一条先輩と付き合ってるらしいよ」


「えっ。財前先輩じゃないの?」


「いやいや、付き合ってるのは財前先輩と一条先輩でしょ。財×一でしょ」


「逆じゃない?」


「は? 解釈違いなんだが?」


 などと盛り上がる一部の生徒達を、周りの生徒達は冷ややかな目で見ていた。


「……逆ってなんや?」


「桜は知らなくて良い。……にしても、あんな大声でナマモノの話って……うちもBL好きだけどあれは無いわ……」


「ナマモノ?」


「現実の男性同士のカップリングのこと。妄想するのは勝手だけど、本人達のこと考えないと。嫌じゃん。友達と付き合ってることにされて妄想に使われるって」


「……癒子も先輩で妄想しとるん?」


「……一方通行の三角関係だと思う」


「しとるんやね……」


「そんな冷たい目で見んでくれ! 仕方ないがね! イケメンが戯れあってると萌えてしまう体質なんだでさぁ!」


「……本当やと思う? 先輩が、男の人しか好きになれんって」


「桜には悪いけど、本当だったら美味しいなと思ってる」


「美味しいって……はぁ……」


「……気になるなら本人に聞いてみれば?」


「……それでそうやって言われたら……うち、どうしようも無いやん……性別なんて変えられへんのやし……」


「けど、告白してから知るより良くない?」


「……そもそも、聞いてもええんやろか」


「公共の場で聞くのはあれだけど、個人的に聞く分には良いと思う。先輩と仲良いんでしょ?」


「うん……」


「仮にそうだとしても、桜は口硬いし。うちのことも勝手に言いふらしたことないしね」


「……じゃあ、後で聞いてみる」


「ん。行っておいで」


「おおきに。癒子」


「おう。頑張りゃあよー」

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