第7話 旅の前

 実戦の経験から2ヶ月という時間が過ぎた。シエラは父が言ったことを体で理解ができた実戦の経験から外の世界は女の子一人で生きるには厳しいところであることを身に知ったのであった。彼女はあの戦いに関しては誰にも言わずただ一人の秘密にしているのであった。結局自分の力によって人を殺してしまったこと事実は変わらないからであった。他の村の娘たちが何故都会の男と結婚など望まずただここで静かに住もうとするのか全てが理解できるのであった。親も、村人たちも都会に行きたがる自分を理解できないと言うのも当然であった。世間知らずの小娘過ぎたと甘く見すぎたとそう毎日心に刻みながら訓練を続けたのであった。シエラには剣術にも才能があったのか、それとも父による遺伝なのか知らないが剣術もかなり伸びたっだの2ヶ月で村の男たちも勝てない程の実力者になっていた。


「はぁーはぁー、シエラちゃん強くなったね。全然勝てないや」


 村の青年オーネがシエラとの稽古が終わってからそう話すのであった。彼は茶髪の髪で緑の目を持った、まあまあ、悪くない顔立ちをしていて村の娘たちにも結構人気のある男の子であった。


「オーネ君が訛りすぎただけよ」


「え?いやいやいやいや、シエラちゃんの成長が可笑しいだけって。俺以外にも皆勝てないじゃん。自警団でも『』は強い強いって言われたけどその娘も鬼のような剣の才能を持っているとはね」


「そうなのかな?」


「そうだとしか言えないじゃん。俺だって子供の頃からずっと剣を握ってきたのに、たったの2ヶ月でこんなにも強くなるとか卑怯だよ。シエラは可愛いままで良かったのに、いきなりどうしたんだよ」


 なかなか女の子たちに人気だった彼はシエラに気が合ったみたいで強くなりすぎた彼女に少し文句を言うのであった。きっと男の子が抱く好きな子を自分の力で守りたいとかの気持ちであろう。


「んー都会に行くってことはオーネ君も知っているでしょ?一人で都会へ向かうって思った以上に危険らしいから」


「本当に一人で行くの?バスティアンさんは一緒に行かないのか?シエラが強くなったと言っても流石に危険じゃない?」


「パパが認める実力になるまではダメって言われたのよね」


 シエラは木剣を振りながらそう話すのであった。彼女の動きは2ヶ月前とはまるで別人で実戦での経験で体力の重要さを身に知ったか稽古の後にも全然疲れている様子は見えなかった。可愛らしい仕草の娘から完全に剣士になってしまった彼女をオーネは正直かっこいいとまた可愛いではなく今は美しいと感じるのであった。


「まあ俺が文句言ったってシエラちゃんよりよわっちぃ奴の愚痴にしかならないかな。精霊使いになれたら村にまた戻ってくるのか?」


 彼は少し期待している様子だった。


「んー、精霊使いになるってね。なれた後にも村に帰ってくるのはいつになるかはわからないかも」


「何でだ?」


 彼は少し失望した様子であった。噂通りであれば精霊使いになれたら村に戻るはずであったが、彼女の答えと考えているような様子から見ると遠い場所に行ってしまうようで不安になったのであろう。


「何でって言われても..単純に精霊使いになれただけではダメだからとしか言えないよ」


 シエラは友達感覚で彼にそう言うのであった。


「シエラが戻ってくるまで俺も強くなるから、な?俺..実は前からシエラのこと好きだったんだよ。だからその..精霊使いになれて、シエラちゃんがやりたいことを成し遂げた先に、村に戻って来たら俺と結婚してくれないか?」


「へぇー、そうなんだ。そう思っていたんだ」


 シエラは結構冷たい反応をするのであった。いや、友達の感覚であったのと別の反応をするのであった。村人の一人であって友達だと思っていたけど下種な男二人との戦いのせいかシエラは父以外の男に対しては距離を少しおいていたが、彼の好きだという言葉で完全に距離を置くのであった。彼の『好き』は純粋なものであろうかも知れないけどそうでないかも知れない、あの下種な男たちと同じであるかも知れない、長年友達みたいに思っていたが、彼はそうではなかった。

 など様々な考えで感情が冷えるのであった。オーネも早まったと思うようで何か話そうとするがシエラは彼を残していつもの花畑に足を動かすのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――


「リフィー来て」


 花畑に座っている見た目だけ見るとまだまだ子供のような少女がそう口を動かし声を発すると、風が、2ヶ月前よりは強い風が花を揺らし、そこからリフィーが現れた。


「おはようシエラ、今日は機嫌悪いね」


 この2ヶ月で精霊使いとしての才能も光り、リフィーとの親和は完全なるものになっていた。そのせいかリフィーは召喚された直ぐにシエラの感情を感じそう言ったのであろう。


「リフィーごめんね。ちょっとね」


 シエラは口にはしないものであったが彼女の思考も共有しているリフィーは既に何事があったのか知っているのであった。


「オーネ君は旅の前日にあんな事言ったのね。本当男って配慮がないから」


 シエラは若干苦い笑顔をするのであった。旅に出る前に重い思いをしたくない、村人たちともいつまた会えるかわからないから、ややこしくなりたくなかったのであった。


「精霊には男性?男?オス?と言えるものがないからわからないけど、鎖をつけようとするっていうか、配慮がないっていうか」


「リフィーが怒る必要はないよ。ごめんね。こんな気持ちのままリフィーを召喚して、私も彼みたく配慮が足りなかったよ」


 シエラはリフィーの言葉にまた自分も同じことをしていることに気づき苦しそうになるのであった。


「シエラ!しっかりして!そう簡単に感情に支配されてはいけないの!一緒に頑張ってきたじゃない!感情に流されてはいけないよ!」


 シエラの波の流れに乗せられたよう揺らされる感情にリフィーが温かい風を起こし彼女のほっぺたを撫でるのであった。彼女にとっては純粋なシエラが人間との接触で少しずつ変わってしまうのではないか心配であった。実際に最初に出会ったシエラよりは感情の変化もより激しくなっていているのであった。


「シエラの感情が前より全然激しく変化するのはおそらく人間の思春期ってものだと思うのよ。そう深く考えないでね。シエラはシエラのままでいいよ」


 下級精霊のリフィーの言葉は下手であったが、シエラに流れてくる彼女の本当の気持ちはもの凄く温かいもので癒されるものであった。リフィーは心の中からリフィーを利用したことについても利己主義とは思わないようと叫んでいるのであった。友達だから力になりたいとそう叫んでいた。



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精霊解放~囚われている精霊を救いだす~ 萩ポン @hagipon1095

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