第5話 痛い子頑張ります!


 タイマーが出現した。

 それを物珍しそうに見上げながら蓮見は自身の参加グループであるdグループ闘技場へと入っていく。


「すげぇー、めちゃくちゃデカいタイマーだな~」


 タイムスケジュールは以下の通り。

 七月◎日(土)午後の部――予選。

 七月△日(日)午後の部――本選決勝戦。


 イベントは二日に渡って開催され今日勝ち残れば明日の同じ時間に今度は本戦である決勝戦で戦うことができる。当然参加するには女子にモテr……一人のプレイヤーとして頑張るつもりである。当然日を跨ぐと言う事もあり使用回数に制限があるスキルも明日になれば元通り。なので、出し惜しみをする必要は全くない。それは蓮見に限った事ではなく、参加者全員に当てはまる。特にルフランの聖剣エクスカリバーは蓮見だけでなく皆が警戒するぐらいに一撃が強力なスキルなわけだが、ルフランだけでなくここにいる全員がそれに劣るとも勝らない必殺の一撃を持っている。なので蓮見はルフランだけを警戒すればいいというわけではない。ここにいる全員を警戒し明日の本選決勝戦へと駒を進めなければ美紀の期待に応えることができない。


 勝てば官軍負ければ賊軍。

 そんな言葉があっただろうか。


「要は勝てば何でもいいってわけだ」


 蓮見はエリカの方にチラッと視線を向けて微笑みながら呟いた。

 幼馴染の期待に応えるには応援席にいるエリカの期待に応えないことには叶わない。なにより遠くに見つけた朱音、七瀬、瑠香、の三人に負けたら何を言われるかわからない。

 なので負けて当たり前、勝って奇跡。

 だけど勝ちたい!

 そんな心構えで今回イベントに望むことにした蓮見。


 タイマーの数字がゼロに近づいて行く。

 大きく深呼吸をしているといつの間にか隣に来たルフランに声をかけられる。


「俺は負けない。今度は全力で来い」


 そう言ってルフランは歩いて通り過ぎて行く。

 徐々に遠く小さくなる背中を見て蓮見。


「……なんで俺に宣戦布告?」


 と首を傾ける。

 心当たりはない蓮見。

 だけど蓮見にはなくてもルフランにはある。

 そんな状況を後押しするように、


「おい、始まったらどっち狙う?」


「ルフランか【異次元の神災者】かだろう?」


「そうだな~」


「逆に二人がやり合って弱った所を狙うか?」


 と、予選でありながら強敵ルフランそして意外性No.1蓮見を敵対視し徒党を組む者達まで現れる。しかしその声は当然ルフランにも蓮見にも聞こえないように配慮されているため、蓮見は自分が狙われていることを知らない。


「ん、まぁ~いいや。どうせあの人ともいずれは闘うことになるんだ」


 そう言って空を眺める。

 そのまま視線を下の方に戻すとタイマーの数字が十秒になっていた。


 カウントダウンの声が聞こえてくる。


『では皆様の準備も整いましたので、七、六、五――』


 会場全体に響き渡る声が会場を盛り上げる。

 それは選手たちにとっては戦いの合図であり、観客席から見守る者たちにとっては――。


『――三、二、一、ゼロォオオオオオオ!!!』


 ――新たな歴史の一ページの誕生の瞬間。

 こうしてタイマーの数字零になると同時四つの会場で選手が一斉に武器を構え動き始めた。

 そして【異次元の神災者】の異名を持つ男の暴走が始まった。

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