第4話 予選開始前のレクレーション


 十分後。

 会場全体に大型のスピーカーを通してNPC女性司会者のアナウンスが流れる。


『お待たせしました~。リリースして半年。世間では誰が強い? 誰が最強? などと噂されていますが実際の所は不明確! ならばそんな世間で注目の的となっている腕に実力がある者達で闘ってもらおうではないか! そんなことから今回バトルロワイアルを開催することとなりました~!』


 観客を煽るようにアゲアゲのテンションで言葉を紡いでいく。


『そして今回は世間から評価され腕に自信がありその腕を試したいという意欲的なプレイヤー各グループ二十五人ずつ招待しました! 残念ながら予定が合わず不参加の方も何人かいましたがその方々の活躍は次回に期待しましょう!』


「あれ? 二十五人? もしかして俺不必要な子?」


 司会者の言葉に首を傾けながら呟いた蓮見。

 なぜかその目は少しキラキラしている。


『ですが!』


 安心して欲しい。

 運営が忘れたくても無視したくてもできない男を忘れるわけがないのだと。


『今回予定が合わず皆さんが期待する方の活躍が見れない! そんな不満を解消する為、特別ゲストをお呼びしました! それは総数四千五百七十票中三千三百九十七票を集め推薦枠に当選された紅選手で~す!!!』


 司会者はマイク片手に身体を半身にしながら蓮見を指さした。

 するとスポットライトが司会者から蓮見へと移動し皆の注目を浴びると同時。


「えぇぇぇぇぇえええええええ!? 嘘だろぉ!!!!」


 本人が一番驚きの声をあげた。

 蓮見はまだ知らない。

 自分が如何に有名人であるかを。

 だからこそ自分は無名のプレイヤーだと未だに思っている。

 なんなら自分は初心者プレイヤーとまで思っている。

 故に目を大きく見開いて。


「なんで!? どうして!? そんなに票集まったの俺に!?」


 大声を急に出したために周りが蓮見に視線を向けていたのだが、その視線全てが逆に『急にどうした?』から『ん? 何を言ってるんだお前?』と言いたげな視線に変わった。それはそうだろう。今までどれだけのプレイヤーの度肝を抜きどれだけのプレイヤーに逆恨みされて来たのかを考えれば少なからずその……なんというか……気付いてもいいのではないかと思いたい。


「ばかぁ……天然鈍感を今見せないでよ……こっちが恥ずかしくなるんだからね」


 急に恥ずかしくなった美紀が小声で呟いた。

 それは美紀だけではない。

 エリカや予選だけならと思い密かに集まった朱音、七瀬、瑠香も同じだった。

 蓮見の事を知っている側が逆に恥ずかしくなるような状況を作りだした男は。


「そんな嘘に騙されるほど俺は馬鹿じゃねぇ!」


 司会者に反論を唱える蓮見。

 身体全部を使い見てみろと言わんばかりに周囲に視線を飛ばす。


「「「「…………」」」」


 あろうことかバトルロワイアル参加者かつ蓮見の視界に入った全員から視線を外される。


「「「「…………」」」」


 誰も何も答えない。


「ほら見てみろ! 全員違うって目逸らされて痛い子みたいに俺がなったじゃねぇか!」


 後ろめたい事実があるから視線を逸らされたと捉えるのではなく、嫌われているもしくは否定的だから逸らされたそんな風に捉えた男は勘違いを後ろめたさなしで司会者に向かって突き付ける。


『……なら仕方ありません! 痛い子さん是非頑張ってください!』


 少しの静寂を持ってして強引に話しを進めようとする司会者。


「いやだ!」


『頑張れば貴方に惚れる女性がいるかもしれませんよ?』


「……わかった」


 見事なまでにNPC(AI)にちょろまかされた蓮見は「まぁ、そうゆう可能性があるなら頑張ってみるか……」と小言を言いながらも納得した。

 単純すぎる故に蓮見を現実世界で知っている者(女)は頭が痛くなった。


『え~話は少し脱線しましたが、推薦票数は真実! 故に特別参加者を加えた百一名による第一回バトルロワイアル王者決定戦は演者不足と言う事はないと言い切れるのでしょうか! そして今回はなんと優勝者に現金百万円がプレゼントされます! 賞金が出るという事でいつも以上にやる気が出るのではないでしょうか!? ふふっ、今からが楽しみですね! と、言うわけで間もなくイベントが開始致しますので参加者の皆様は自分が出場するグループの闘技場へと移動してください。五分後試合開始となります!!!』


 選手と観客の全員に見えるほどの巨大なタイマーが出現し時を刻み始めた。

 それを合図に選手がそれぞれのグループ闘技場へと移動する。

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