第2話 ダンジョンボス攻略
ラッシュたちと別れたあと、時間を潰すためにダンジョンの奥へと向かうこと凡そ三時間。
最短ルートを駆け抜けた俺は全三十階層からなるこのダンジョンの最奥。
つまりはボス部屋の前に到着していた。
ソロでダンジョンに潜るのは別に久しぶりではない。
ラッシュたちが行きたいダンジョンがあると聞けば先に潜ってみて最下層までの情報収集を行っていたからである。
そう、俺は年下の後輩にいい顔したいタイプである。
ラッシュたちは同郷ではあるが、あいつらがブロンディア王国にやってきて冒険者を始めたのが二年前。
俺が故郷を出て冒険者になったのはもう十年前。
まだ23歳だが実はベテランだったりする。
そんなこんなで実はパーティどころか所属クランの中でもダントツのダンジョン踏破数を持っていたりもするわけだ。
迷宮管理組合(通称•ギルド)が発行している個人の貢献度を表す等級はSだ。
等級はGからA、その上がS、SS、SSSまで存在するらしいが、SS以上はギルドの書庫の名鑑で名前が確認できる程度には昔の人間の話だ。
結論、何が言いたいかと言うと……俺は多分この国で三本の指くらいに入る冒険者だ、多分。
「ブモォォォォォォ!!」
だからC級ダンジョン最下層を守護する、四本腕でどうみても普通の金属じゃないエンチャント付きの戦斧や大剣や槍に大楯を構えた、金色の肌の6メテル(※メートル)程度の牛の魔人でも相手にもならない。
雄叫びを上げながら武器を持った三本の腕を振り回す牛の魔人の間合いにするりと入り込み、振り下ろされる攻撃を回避する。
左の下側の腕に構えた大楯は急所を隠すように全面を覆い、その上の左手からは長槍が振り下ろされて、石畳が弾け飛ぶ。
瓦礫に気をつけながら身を躱せば、続いて右の下の腕が戦斧を斜め下から掬い上げるように薙ぎ、後方ステップで躱したところに狙いすましたかのような上段からの分厚い大剣が振り下ろされる。
それもサイドステップで躱せばまた戦斧が、槍が、大剣が。
図体のデカさに長柄の武器、弱点になるであろう至近距離での間合いにも対応する技能。
C級ダンジョンのボスにしてはやや強い。
だけどまあ、A級ダンジョンだと中層の雑魚に入れるかどうかかなあ。
「フロストヴェール」
右手を翳し、魔法名を唱える。
瞬く間にボス部屋中に白銀の光のヴェールが差し、やがて牛の魔人の巨体を覆っていく。
すっかりとヴェールに覆われた牛の魔人は発光が収まると見事な氷像へと姿を変えていた。
俺はゆっくりと氷像へと近寄り、腰に佩いた剣を薙ぐ。
「マジックソード」
属性の付与されていない無属性の魔力が刀身を覆い、元の片手剣の先から延長されるように半透明の輝く刀身が姿を現す。
――そして、一刀両断。
魔力によって延長された長大な刃が6メートルもある巨体をあっさりと切り裂いた。
ゴゴゴと後を立てて崩れ落ちた氷像が地に落ちて豪快に弾け飛ぶ。
ダンジョンボスクリア。
戦闘時間は3分にも満たない圧勝だった。
それじゃあ、適当に宝物でも漁って帰るか。
そろそろラッシュたちもクランに戻って各々、休憩でもしてるころだろう。
地上に戻ったら人目に付かないうちにクランを脱退して、宿を借りなきゃなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。