第46話 自分から機会を作ろう

「ハイ、どうぞ、まだ在庫はある?」

 山下さんに飴を差し出す。


「ありますよ…、でももらっておきます、へへ、もうかっちゃった…」

 廊下ですれちがうとき、誰も他にはいなかったのでね…。


「よかった…、この前買い過ぎちゃって…」

 嘘ではないけれど、あまり食べられないし…。


「そうですか?いつでもこちらでストックしておきますよ。お返しするときは少し減っているかもしれませんけれどね…」


 自分から勇気を作って出そう、自分から機会を作ろう…。

「ありがとう…。でね、あのさ…」

 不思議そうな顔をする山下さん。


「あのね、僕のマグカップがいつも白くてきれいになっているんだよね」

 ちょっと笑う山下さん。

「ついでですから…、私のをするときに…。ついでなんで…、いいんです」

「ありがとう…、それでね…」


 なんでだろう、僕の言葉を待っている山下さん。うれしいけれど、なんでだろう。

 落ち着け…、小杉、失敗はつきものさ。

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