第28話 ミミズだってオケラだって…

「別にね、そんなに“いい人”だとは、自分は思ってないよ」

「でも、助けてくれたじゃないですか?倒れこんだ天使、ガブちゃんは嬉しかったです…」


 確かに大変だったけれどね。でも、あれぐらいみんなするさ。

「いいんです、その辺というか、対象の選択は現場にまかされているんで…」

 ふ~ん…


「昔ね、同僚でいたんですよ、根はいいやつなんですがね、ちょっとマニアックで…」

 酔ってきたかな、ガブちゃん。


「彼は爬虫類さんが好きなんですよ」

 ハチュウルイ?

「ハチュウルイって、爬虫類? ヘビ、カメ、トカゲ?」

 大きく頷くガブちゃん。

「そうそう、さすが人間さんですね、小杉さん」

 褒められたのか? 天使に…


「彼は対象に、カメ、カメ、トカゲ、ヘビ、ワニ、イグアナって笑っちゃいますよね」


 笑うところなんだろうな…きっと。


「面白いね…」

「そうでしょ。普通、カメ、カメってきたら次はモグラですよね…、ホント」

 そうなんだろうか? そうなんだろうね、そっちの世界では。流れとしてモグラなんだろうね。


「彼はこの仕事気に入っていたんですが、システム室のデータ管理に異動になっちゃいました」

 そんなのがあるのか? そっちの世界に。


「でも彼は言うんですよ。『俺はカメ、カメってきたけど、ウミガメ、リクガメって変えたのにな…』って。まあ、理屈ですがね」

 さすがに返す言葉もない、ないよな。


「そうゆうことで、あんまり偏らないければ対象は“誰でもいい”んです」

 ガブちゃんにっこり笑う。

「他の人でも、他の方でも、他の動物さんでも、昆虫さんでもね…」


 なんか…、う~ん…、わかってきたよ。わかってきたけれど…。


「つまり生物ならなんでも…、ミミズだってオケラだってアメンボだって、そう人間でも…、その中の小杉でも…ってことなのかな?」


「ハイ!小杉さんでも山下さんでも吉沢さんでも…。ミミズさんやオケラさんやアメンボさんがなぜ出てきたかわかりませんが、そうです」

 またにっこり笑うガブちゃん。


「誰でもいいんです。権利といってはなんですが、対象に区別、差別はありません。平等です。人間が特別ってことでは、まったくありません。上司の前では、ガブちゃんにとっても、生物はみなさん同じです。だけど僕はね、いい人に、いい生物さんに幸運を授けたいと思ってます。僕の基本方針です。なんで、小杉さんにしました。これが理由です」


 ニラタマが運ばれてきた。

「いいよ、好きなだけ食べてよ」


「やっぱり、小杉さん選んでよかったです…」

 天使、ガブちゃんは器用に箸を使ってニラタマを食べ始めた。


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