記録 精神科病棟



お久しぶりですね。

どうでしたか? お送りした内容は。

……そうですか。なら良かったです。


すみませんね、もう少し主観による記録もお渡ししたかったのですが、

あの後の記憶がチグハグで記録を残すことが精一杯だったんです。

いえいえ、受け取れませんよ。

こんな身になっていますので、特に使い道もありませんから。

しかし、私が事故死ですか。まあ妥当なところですね。

実際に事故に遭ってるわけですし。

影響ですか。

そうですね、間違いなく影響の一つかと思われます。

私の素性を考えれば当たり前ですね。

それに聞きましたよ。

村が廃村になったそうじゃないですか。

まあ遅かれ早かれでしたけどね。

あの様子だといつ終わってもおかしくありませんでしたから。

ええ、今日来た理由はそれだと思いました。

あの村は必要なくなったんだと思います。

……え? いやあ、思うんですよ。

移動しているんじゃないかって。

あの風習というか、あのよく分からないものが。

まだ浅いと思うんですけど

少しずつ出来上がっているように思えるんです。

渦のように上から少しずつ。

場所を変えて、人を引き摺り込んで、中心にいる何かが。

チヨ? ああ、関係ないですよ。

確かにチヨの力は本物だったみたいですが、

あれは、元からあの場所にいた何か。

我々が想像も付かない何かです。

ぐるぐる、ぐるぐる、と。

渦巻いて。

私たちを惹き込んではね。

だからチヨも惹かれたんでしょう。彼女は強い力を持ってましたから。

これからは……分かりませんね。

あのマンションの様子が明らかに変なのは間違いありませんから。

決して終わったわけではないでしょう。



私は思うんですよ。

私たちは起こしてはいけないものを起こしてしまった。

あれは、産まれた呪いなんてものではなくて、

ジゴクそのものなんじゃないかって。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジゴクから生まれしモノ ゆゆの @yuyuno123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ