第5話 アメと義の間にある愛
義とアメは元夫婦である。しかし、今は婚姻を解き、いわば、離婚し、なぜか、それでも関わりを二人は持っていた。
当時の二人はそれは、それは、周りが羨む程の仲良き夫婦。。。
とは、決して言えたものではなかった。
周りからは、言葉には出さないものの、誰もが不思議に感じていたのだ。
「よく、夫婦やっているな。。。
意思疎通できてんのか?。。。」等、夫婦らしくない姿だった。
表面上はアメは夫、義を前に、自分は後ろからついていくような、おしとやかで、そして、艶やかな綺麗な容姿をしていた。勿論、今でも、綺麗な容姿である。
義はそんな艶やかな、そして品のあるアメに惹かれ、
アメは義の学術的な姿といつも、冷静な義に魅了されたのだった。
あくまでも、表面上な二人。。。。
ある時、義は神より命を受ける。
子供を育てるようにと。
神はなぜか、義にだけ指名した。しかも、アメとは離れ、別の場所で。
まだ、小さく幼い子供。それが果穂だった。初めて果穂と出会い、育てていくうちに、義の感情はそれまで、経験したこともない、思った事もない。
そんな感情が次々と湧くのだった。
その感情。。。
「愛おしい」
子供に親が抱くようなその「愛おしい」と言うものは果穂が成長するに連れて、変化をとげていく。
義の中で静かに、少しずつ。
芽を出し、伸びていくように、それは
真からの「愛」と言うものだった。
アメとは決して生まれもしなかった、その感情。
愛おしい気持ち。
愛すると言う気持ち。。。
神は義の中に眠る、愛を呼び覚ます為に果穂を、義に育てさせたのである。
結果は、神が考えるより、遥か、いや、行き過ぎる位の感情を呼び覚ましてしまったようであった。
果穂が16歳位の頃には、義には子供に対する、愛ではなく、一人の女性に対する、愛を抱いていたのだ。
それは、アメに向けていたような感情ではなく、心の底からの
愛おしい。
大事にしたい。
特別な想い。。。
義は常に果穂に寄り添うようになっていた。
一方アメは、父である神より、義との婚姻を解く日が来る事を予告されていたのだった。
初めは信じられないアメも、義の心の変化を感じとる。普通は、胸中穏やかでは居られぬはずだが、アメは、潔く婚姻を解いた。
義はアメのその心の内を察した。そのような事が出来るようになったのも、果穂のおかげなのだ。
アメと義はそれだけ、感情が薄く、冷ややかな神だった。と言えよう。だから、周りも不思議に映っていたのだ。
それでも、別な形でアメと義は共にいる。決して夫婦ではないが。。。
義は、果穂を愛しながら、アメに対して別の感情が自分の中にある事に気がついていく。
アメにこき使われ、強い口調で、たまに言われようとも、アメに対しての義の感情は一言でいうなれば、そう、
愛おしい。。。
果穂とは違う。愛おしい。気持ち。義にはそれが何なのかわからなかった。
しかし、今までアメに治療された者達の心から義もまた、学ぶのである。
愛とは様々な形や思いがある事を。
アメに対してはその様々な愛のうちの一つなのだと。
アメ「ねぇ、義。私達夫婦だった頃より、今の方が良い感じよね。私だけ?そんな風に感じるのは。」
義「そうだな。。。アメ。。」
義「アメ、愛しているよ。」
アメ「な、なによ!今までそんな事言ってくれた事なんて、ないじゃない!」
照れたように涙を浮かべながら、アメは義を見た。
アメ「愛しているわ。義。。。」
義は微笑んでいた。。。
さぁ、アメの診療所は今日も忙しい。アメが義をこき使いながら、
時に強く言い放ちながら、アメと義は
決して夫婦ではない、二人の愛を確立させていくのだった。。。。
アメの診療所 中筒ユリナ @ariosu-siva
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