チューチューキーキー

ヒナタジャンクション

第1話 坂本という女

京也きょうやくん!!イオンなんて県民の敵よ?

ふるさとが恋しい気持ちはわかるけど」

「いや恋しいのは確かにそうだけど…イオンなんていくらでもあるし」

「ちょっと待って…あなた今、イオン『なんて』って言ったわね!?無礼者!」

「あんたもそう言っただろうが『なんて』って!」


 学校から家路につこうとするその瞬間、俺たちはこんなやり取りをしょっちゅうする。


「ていうかあんた、俺の前では土佐弁じゃなかったのかよ?」

ふと思い出した口約束を指摘してみる。


「あっ…忘れちょったわけじゃないがでぇ?おまんの『高知に対する意識』?それを確かめたかったきぃ…」

「無理しなくてもいいよ」

「うーん…標準語のあなたといると、こっちまでつい標準語になるのよね…キョウヤくんってあれよね?遊園地の名前を東京に取られたことで有名な千葉県出身だったよね?」

無意識なのかわざとなのか、彼女はそんなことを口にした。

「別に取られてないですけど!?ゆずってあげただけですぅ!」


「あれキョウヤくんやない?」「キョウヤくんやねぇ。横におる人誰やろう?」「繚花りょうかちゃんやない?」「あー…最近よく見かけるでね?あの二人が一緒におるとこ」


信号待ちをしている中、後ろの方から同級生たちの声が聞こえてきた。

…デキてないからな?そこ勘違いすんなよ?こいつが勝手に絡んできてるだけだからな!?


そうは思いつつも、まだ転校して日が浅い俺は同級生にツッコミを入れることも難しい。


まあ、一番に話しかけてきたのが「こいつ」だし、それを嬉しくないと言えば嘘になるわけだけど…

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