第8話 茶人 VS Kickboxer

3ヶ月後、僕はリングに上がっていた。


「殺らなきゃ殺られる」


お互いいっぽも譲らず試合は延長戦にもつれ込んでいた。


お互いオーソドックススタイル。

相手は僕より背が高くキック主体の選手。

僕はパンチだ。


全神経を集中させ、柄杓ひしゃくを構えるかの様にファイティングポーズをとった。


カーン!!!


お互いグローブを合わせる。


僕が間合いに入ろうとすると前蹴りで止められる。

相手は前蹴りのフェイントを巧みに使い、前に出る僕にテンカオを合わせた。


「オーウェーイ!」

セコンドが声を上げる。

オーウェイってどういう意味だろ。


もう時間が無い。

とにかく攻めよう!


相手は何度もローキックを蹴り込んでくる。


練習通りの感覚に体が勝手に動いた。


「これだ!」


ローキックに合わせてカウンターの右!左、右。

水指みずさしの蓋を開ける手捌きでパンチを叩き込んだ。


物凄い手答えと同時に相手が倒れる。


「ダウーン!!」


1.. 2... 3...


立つな、、


立つな、、


念仏の様に唱える。


心とは裏腹に立ち上がる相手選手。


ファイティングポーズをとる眼を見ると、たしかに効いている。


「勝負どころ!」


すかさずラッシュにいく。

近づくと組まれる。

離れると強烈な左ミドルがとんできた。


「強ぇー」


ガードした右腕が上がらなくなる。


息が上がる。


その時だった!


左ミドルの軌道は茶筅通し《ちゃせんとおし》の様にアーチを描き、チリ打ちの音がしたかと思うと血の匂いと共に目の前が真っ暗になった。


「結構なお点前で、、、」








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