魔法の勉強

魔法のかけら

「そういえば先輩、ホウキが言う事を聞かなくても飛べるとおっしゃいましたね」


 私が問いかけると、先輩は頷く。


「ああ、魔法が使えれば問題ねぇ」

『そもそも、なぜ魔女プロデューサーであるアナタがご存知ないんですの?』


 先輩の肩口からペガさんがひょっこり顔を出す。

 その視線は、かばんから顔を出したトシローさんに向けられている。


『こういったことは、魔法学校で習ったでしょうに……』

『魔法でなんとかできるのは覚えていたのだ。でもやり方を忘れたのだ』


 あわてた様子でトシローさんが言う。


『簡単ですわ。魔法石にお願いすればいいだけの話ですから。……ですが』


 ペガさんは、首をかしげた。


『ですがアナタの魔法石、今は魔法が使える状態ではないですわ』

『どうしてなのだ!?』


 え、魔法が使えない……? 昨日までは使えたのに?


『どうしても何も、魔法石の中の魔法のかけらが、空っぽですわ』


 ペガさんが不思議そうな顔で、トシローさんを見つめる。


「魔法のかけら……?」

「なんだ、何も聞かされてねぇんだな。とんでもねぇ魔女プロデューサーだ」


 私が首をかしげていると、天馬先輩が大きくため息をつく。


『何を言うのだ。ワガハイは、れっきとした魔女プロデューサーなのだっ』


 むっとした表情で、トシローさんが反論する。


『出来の悪い魔女プロデューサーに引っかかってしまったのですわね。でも大丈夫。あたくしたちが、サポートしてさしあげますわ』


 トシローさんの言葉を無視して、ペガさんが鼻をならす。


「あ、ありがとうございます」

『ミスズも納得したら駄目だめなのだ!』

「何でもそうだけど、魔法も自由に、無限に使えるわけじゃねぇ」


 先輩が腕のシャツをめくりあげる。

 出て来たのは、私とトシローさんと同じようなリボン。

 私とトシローさんのリボンは赤色。

 ペガさんと天馬先輩のリボンの色は、白色。


「お前のリボンの上にある石と俺の石の違い、分かるか」


 そう問いかけられて、私は自分と先輩の石を見比べる。


「……先輩の石の方は、何か中に入っているような感じです」

「そうだ。石の中に見えるキラキラしたもの、それが魔法のかけらだ」

『魔法のかけらによって、魔法が使えるのですわ』


 天馬先輩の腕の上に飛び乗って、ペガさんが言う。


『魔法のかけらを使い切った魔法石は、ただの石です。魔法を使うには魔法のかけらを集めなくてはいけません』


「どうやったら、魔法のかけらが手に入るのでしょう」

『それは、様々ですわね』


 ペガさんが考え込むように目を閉じる。


『人のために何かをしたり、よい魔女になりたいという強い意志が感じられたり……。そういった時に魔法のかけらが手に入ると言いますわ』


『仕方がないのだ。ミスズ、今すぐにでも人助けを始めるのだ!』


 トシローさんが、いきおいよくかばんから出てこようとする。


「トシローさんは、まだ出て来てはいけません」


 トシローさんをあわてて鞄の中に押し込む。


「人助けをするって言っても、そう都合よく困った人は見つからねぇぞ?」


 天馬先輩が顔をしかめる。


「確かに、そうですよね……」


 それに、もし困っている人を見つけられたとしても、私が声をかけられるかどうか……。


『つべこべ言わず、探すのだ!』


 しびれを切らしたように、トシローさんが言う。


『ワガハイ、早くたくさん、魔法のかけらを集めて一人前の魔女を作りたいのだ』

「勝手に作らないでください」


「なんせアレだな、人が多い場所の方が見つかりやすいだろ、今日は学校で探そう」


『学校での困った人探しにレッツゴーですわ!』

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