第2章 全ての始まり

 クーラーのない教室は夏になるととんでもないくらい暑くなる。いるだけで額から滝のように汗が出てくる。帰ってくるテストとこの暑さで今日は朝から憂鬱な気分だった。やがて先生が入ってきてうるさかった教室も先生の点呼の声しか聞こえなくなった。返却が始まり、教室は悲鳴を上げる生徒でいっぱいになった。そのキーキーうるさい声がもっと私の体調を悪くさせた。私も呼ばれた。立ち上がろうとしたその瞬間目がかすみ始め私はそのまま床へと倒れ込んだ。そこからはよく覚えていない。

 目が覚めるとそこは保健室だった。誰かが連れてきてくれたらしい。隣には鞄と私のテストが綺麗に並べてあった。保健室の先生がやってきて、ももが連れてきてくれたことを知った。私は暑さで倒れてしまったらしい。特に問題もなくもう帰っていいと言われ私のことを待ってくれていた、ももと一緒に保健室から出た。

 放課後の校舎は夏休みだからか閑散としていた。校門のところで誰かが待っていた。健斗君と賢介君だった。どうやらももに帰る途中で呼び止められたみたいだった。


「遅いんだよ!早くしろ!そこの体弱子さんも早くこい!」


昔から変わらず賢介君は私のことを体弱子さん呼ばわりしたが私は無視した。


「かわいそうだよ!彼女だって体が弱くなりたくてなったんじゃないんだから!」


健斗君が言った。はじめて私のことをわかってくれた。そう私はなりたくてなったんじゃない。

 話が終わったらすかさずももが土曜日の話をした。どうやら二人とも空いてるみたいだった。行く場所は四人で話し合うことにした。みんな緊張しているからか、なかなか意見が出なかった。正直私は、二人が素直に受け入れたことにびっくりしていた。四人全員が楽しめる場所なんてないと諦めかけていたその時、あるポスターに気づいた。どうやらみんなも気づいたようだ。そのポスターは隣町にある、『フューチャーフォレスト』と言うテーマパークのポスターだった。

 私はもともと隣町に住んでいたからフューチャーフォレストはよく知っている。隣町の人からしてみれば象徴的なものであり、唯一の観光スポットである。他の3人もフューチャーフォレストがいいみたいでそこに決まった。そのまま家に帰りカレンダーに


「フューチャーフォレストで遊ぶ♪ 9:00入り口集合」


と書いた。

 今まで嫌だったのに急に楽しみになってきた。早く土曜日になって欲しかった。それからは毎日欠かさずフューチャーフォレストのホームページをチェックしていた。グッズ情報からアトラクション、お手洗いの位置までも覚えてしまうんじゃないかと思うぐらい何度も園内マップを見た。あの場所も欠かさずチェックしておいた。


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