涙の初恋

鈴木茉由

第1章 長い2泊3日

 チャイムが鳴った。一学期期末試験終了の合図だ。高2の夏が始まろうとしている。


 先生が教室に入ってきた。ホームルームが終われば待ちに待った夏休み。この後はももの家でお泊まり会をする予定になっている。つまらない話が永遠と続き、終わった頃にはまるで1時間以上話を聞いていたかのようだった。終わりの挨拶と共に私は急いで家へと帰った。

 高2にしてはじめて友達の家でお泊まり会をする。忘れ物がないよう入念にチェックして私は家を出た。心の高鳴りを感じながらももの家まで全速力で走った。別に約束の時間に遅れているわけではないが、なんだか走りたい気分だった。五分ほどでついた。立派な屋敷に豪華な門。これが貧富の差かと思うと思わずため息が出た。ももの本名は本条桃子。本条家はこの地の元当主で、今では会社を立ち上げ、有名な一家だった。それとは反対に中井家はいわゆる普通の家庭だった。そんなことを考えているうちにももが私に気付いて門を開けてくれた。


「早かったねー!もうちょっと遅いかと思ってたからびっくりしちゃったよ〜」

「ごめんごめん。ついウキウキしちゃって思わず走ってきたら早く着きすぎちゃった」


そうこう話をしながら屋敷の中に入った。まずはももの部屋に案内された。荷物を置き、それから屋敷の中を案内してもらった。まるでテーマパークのような広さで案内が終わった頃にはくたくただった。

 それからはあっという間に時が流れていった。気づけば、明るかった外もすっかり暗くなり、時計の針も11を過ぎていた。流石に眠くなり二人で布団に入って話した。その時ももが小声で私に聞いてきた。


「隣のクラスの田中健斗君と付き合ってるんでしょ?」


いきなりの質問にびっくりしたが迷わず「付き合ってなんかないよ〜!」と返答した。


「ももこそ隣のクラスの床田賢介君といい感じなんでしょ?結構噂になってるけど?」


思わず言ってしまった。


「付き合ってなんかないよ」

「本当に?嘘ついてない?」


また余計なことを言ってしまった。余計なことを言ってしまうのが私の悪いところらしい。

 ももは私の方こそ嘘をついているのではと聞いてきたが、私はちゃんと健斗君と話していた理由を話した。健斗君と私は同じ文化祭代議員で彼から提案された案件について二人で偶然話していただけと説明した。ももはまだ疑っているみたいだがそれが真実だった。それから沈黙の時間が続いた。1番最初に話し始めたのはももだった。その内容は驚くべきものだった。急に私と健斗君を連れて遊びに出かけると言い出した。私は行くならももも賢介君を連れてきなさいと言った。それからはよく覚えていない。

 気が付いたら夜はすっかり明けていて朝日がカーテンの隙間から入ってきた。ももにダイニングルームに連れてかれ朝食をとった。それからまた部屋に戻って雑談をした。昨日の夜の話になった。沈黙が続いたので、私は恥ずかしかったが、話し出した。


「そういえば、床田賢介君って私と同じ小学校なの。」

「そうなんだ」

「でね、あまり、みんなの前でまだ話してなかったけど私って昔から体が弱くて、小学校のときから何度も入退院繰り返してて、学校に戻っても、体育の授業に参加できなかったり、普通に過ごしてても、すぐ倒れたりで、よく虐められてたの。とくに賢介君には。だからももも気をつけたほうがいいよ。」

「気遣いは嬉しいけど私たちそんな仲じゃないから」

「そっか...残念だな〜」

「で、どうなの?」

「何が?」

「土曜日に遊びにいく話」

「あー」


それからはずっと土曜日の話をずっとしていた。結局、ももに押されて健斗君と賢介君が大丈夫なら来週の土曜日遊びに行くことが決まった。


「そうだ、さっきの話の続きだけど、いつ何が起こるかわからないってことだけ知ってて欲しい。」

「...」

「ごめん」


 午後は気分転換のためにショッピングに出掛けた。服や雑貨色々な店を見て回った。調子に乗って買い過ぎてしまった。その日の夜は夜通しゲームをしたりしていた。

 あっと言う間に最終日を迎えた。最終日の午後は私の家で遊んだ。私の家に帰った途端に家が狭く感じてしまった。気のせいだとスルーして自分の部屋へ案内した。しばらく話した後ももは帰っていった。


 長い2泊3日が終わりを告げた。


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