第25話 エピローグ

 春が来て手術の傷も癒えた真紀は、林さんから借り受けた家に住み始め、功はなし崩しにその家に同居することになった。

 真紀のビニールハウスは骨組みが出来上がり、固定張りのポリフィルムを張る作業は自分たちですることになった。

 しかし、大きなフィルムを広げるのは二人では手に余るので野口や山本事務局長をはじめ関係者が総出で手伝った。

 ポリフィルムが斜めになったり少しでもしわが寄ろうものなら真紀のホイッスルが響き、皆が大わらわで修正に走り回る。

 ポリフィルムはビニールハウスの骨組みにビルトインされているレールに針金状のスプリングで止めていくのが基本で、さらに細かい部分はパッカーと呼ばれるプラステチックのパーツで固定する。

 ポリフィルムを張るのは大変な作業だが、いつものメンバーの間では笑いが絶えなかった。

 ビニールハウスの固定張りポリフィルムを張り終えたのはすっかり日が暮れたころだった。

 真紀が再びホイッスルを吹いて皆を呼び集めると言った

「皆さん本日は貴重なお時間を割いて私のハウスのフィルム張りにご協力いただきありがとうございました。ささやかなお礼といたしまして本日六時よりバーベキューパーティーを開催いたしたいと思います。食材につきましてはこちらの功ちゃんより資金提供いただきましたので皆さんにご紹介いたしたいと思います」

 みながいっせいに功の方を見て拍手をする。

「ちょっと待て、そんな話聞いてないぞ」

 いぶかしむ功に、真紀は言う。

「本棚の裏側に隠してあった三万円を見つけたの。てっきり私のパーティーのために積み立ててくれたんだと思ったけど」

「それは、ぼくがガンプラディスプレイルームを組むために貯めていたお金だ。返してくれ」

 功は抗議したがどうも分が悪いようだ。

「功ちゃんありがとう

 改めて野口が発声すると皆が拍手する。どうにでもしてくれと開き直った功は、あきらめて皆とリースハウスの完成を祝った。

 普段は蛙の声が優勢なのどかな山里に皆の声がにぎやかに響いていた。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る