第2話 合コン

藤咲葵ふじさき あおいは今日も合コンに勝負を挑む!


せっかく女と生まれてそれなりの容姿があるのだ!しないでどうする!


というかぶっちゃけ彼氏が欲しい!


周りの友達は大学に入り次々彼氏を作っている。


決して見た目が悪くないのに葵にはこれまで彼氏ができた事がなかった。


「どういう事なのよ!」


今日も惨敗した合コンの帰りにコンビニに寄って缶ビールを大量に買って一人公園でヤケ酒をしていた。


「藤咲さんは可愛いけど…なんかがっついてて怖いんだよね~」


今日狙ってた男に言われたセリフを思い出すと缶ビールを握りつぶした!


「あの野郎…あんな事言われるくらいなら一発お見舞いしてやればよかった…」


葵は中高と空手に明け暮れていたため男に縁がなかった。


ブンッ!


怒りのあまりに突き出した拳が空を切る、この拳をあのニヤけた男の頬にぶち込んでやればどんなに気持ちよかったか…


こんな事を思っているから彼氏が出来ないのだろう。


「くそー!」


葵はさらに缶ビールを開けるとゴクゴクと飲み干した!


その後もビールを飲み、そろそろ帰ろうかと立ち上がるとふらつき足がもつれた…


支えようにも何もなく葵は後ろにひっくり返る。


「きゃあ!」


後ろには30cm程の円形の噴水があった…お察しの通り葵はそこに頭からダイブする。


「ごぼぼぼ!!」


暴れて起き上がろうとするのに全然起き上がれない!


暴れれば暴れるほど水が口に入りパニックになる。


な、なんで!!


この時葵の肩からかけるバックの紐が運悪く噴水の留め具に引っかかっていた。


水の中でそんな事がわかるはずもなく…葵は徐々に意識が遠くなる。


水の中ですぐ上にある水面にあと数センチ届かない…


上にはそんな葵を笑うかのように綺麗な月が見下ろしていた。





「ハッ!」


王蘭は意識を取り戻すとはぁはぁと空気を吸い込む!


息が出来ることがこんなにも幸せな事だったとは…


しかしさっき見た夢…いや夢じゃない、あれは前世の記憶だ。


そうだ私はあんな恥ずかし理由で死んだんだ…


王蘭は頭を抱えた。


「嘘でしょ…恥ずかしすぎる…あんな浅い噴水で溺れ死ぬなんて、しかも合コンの失敗でヤケ酒…」


あの時の酒が残って二日酔いでもしたように頭が痛かった。


ガシャーン!


すると入口で女官が桶を落として驚いた顔をしていた。


「王蘭様…!!」


駆けつけると涙を溜めていきなり土下座をした。


「え!?」


王蘭は驚き立ち上がろうとするが体が上手く動かせなかった。


ぐらついてベッドに手を付きよろめくと…


「ご無理なさらずに…王蘭様はずっと目覚めることなく寝ておいででした…」


震える声でそういうと


「私達が目を離したせいで王蘭様は池に落ち、助け出された時にはもう既に意識が…私共でどうにかお世話をしておりましたが…よかった…目が覚めて…」


そう言って本当に嬉しそうに目を潤ませる。


死ぬ前はこんな子がこんなにも自分を思っていてくれてることに気が付かなかった…


「ねぇ…あなた名前は?」


「はっ、はい!凛々りんりんと申します。王蘭様が目が覚めるまでどうか世話をさせて欲しいと頼み込んでおりました…王蘭様の目覚めた今、どのような罰も受ける覚悟にございます」


凛々は頭を下げて決してあげようとはしなかった。

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