9 また会う日まで



「……」

「ミオ?」


 ミオが微笑んだ気がして、途中で足を止めて振り返ると、もうそこには誰もいなかった。視界の奥で、カラフルな自動販売機が、ムーンと低い音を立てている。いつの間にか、あたりはオレンジから黒に変わっていた。


「……すばしっこいやつ」


 口元に微かに笑みを浮かべて、手の中のペットボトルを見た。自己紹介の下に、小さく何か書いてあるのを見つける。


 また、キミに会えるのを楽しみにしています!


「……私もだよ」


 自動販売機に背を向け、歩き出す。その瞬間、ふわりと耳元を柔らかい風が吹き抜けた。


「花言葉。思いがけない出会い、だよ」


 ミオの声が聞こえた、気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

苺みるく男子 もこ @A_mokomoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ