オンオフ激しい巫女ちゃんは俺にだけデレる

雷麦

オンオフ激しい巫女さんは俺にだけデレる

「はい、じゃあここ斑鳩いかるがくん、

 わかる?」


 ん……えっと、黒板から見るにこの問題だな、これは多分②かな。


 「……はい、②っす。」


 「あ、あら? よくわかったわね、正解。夢の中からみてたのかしら?」


 クラスの奴らがクスクス笑っている。いちいちこのババアは余分なこと言うな……まぁいいや、おやすみ……


「ちょっと、 すぐ寝ない!」


「うおっ! って空澄あすみか…。でも俺ここで寝ないと今日のバイト頑張れない……」


「それは授業を寝る理由にはならないわ。バイトはバイト、授業は授業で頑張ればいいじゃない」


 俺に1限目から寝かせてくれない彼女は

橘  空澄たちばな あすみ、昔からここらを治めている神社の社家しゃけの一人娘である。そんな肩まで伸びた落ち着いた黒髪に、透き通った茶色の瞳を持つ彼女が、俺に軽く鬼畜なことを言ってくる。


 彼女はかなりの大声を張り上げているのに、そこに野蛮さ、下品さは感じられない。それは彼女が低身長ながら高1とは思えない凛とした佇まいだからだろうか。なんにしろ、彼女が授業中でありながらも大声を張りあげて、それを誰も注意しないのは、彼女のことを皆が人格者として認めているからだろう。 


 俺は仕方なく顔をあげる。


「あいよ、」


「わかればいいの」


 少しフフンと笑ったあと彼女は凛とした表情でまた授業に臨む。きっと俺が反抗しない、というかできないのは、彼女が少なからずこの学校では彼女が一番かわいいと胸を張って言えるくらいにはかわいいからである。


 横顔をみても、うん、めちゃくちゃかわいい。

手を見ても、うん、きれい。

 側はたから見たら、ただの変態にしか見えないであろう顔で彼女をチラチラみていたら、


「授業に集中なさい」

と怒られてしまった。流石に真面目に授業を受けよう。



 そして学校が終わり放課後……


「あ"ーーー疲れたー。バイト休みてー」


「何を言っているの、ほら、しゃきっとしてバイトに臨みなさい」


 俺はいつも通り空澄と帰っている。……え?、

なんで俺が彼女と帰っているのかって?よく聞いてくれた、この際教えよう。俺は彼女と同棲している!!!!!!!!

 というのはかなり盛ったが、俺は彼女の家に居候させてもらっている。俺は親がいない。中学2年のとき、親は別れ、母親について行ったが、その母親も交通事故で亡くなってしまった。俺は警察に一時保護され、保健所へ送られるところをこの

橘家に引き取られた。そして住まわせてもらうかわりに俺が勝手に家賃としてお金を払っている。まぁ、神主さんにはいつも家賃以上にお世話になっているんだけどね。

 まぁだから俺はバイトをやっている。そして、一緒に帰っているわけだ。


「なぁ空澄も一回バイトしてみない?」


「拒否しておくわ」


 即答かい。


「そうかいそうかい」


と愚痴をこぼしながら帰っていると、下校中すれ違う同じ高校のやつらから声がきこえる。


「ねぇ、なんであの空澄さんと一緒にいるの誰?」ヒソ


「なんか空澄さんの同居人らしい、」ヒソ


「えー、なんか釣り合わないね。」ヒソ


 はぁ、なんかいわれているが、正直この類いのことは言われ慣れている。俺はクラスの中で普通よりはかっこいいかな?という位置の顔だ。それに、学校では優等生の空澄と、万年寝てる不良の俺ではたしかに釣り合っていない。


「ちょっと」


と彼女達に空澄が話しかける。彼女達はびくっ、

となり、ビクビク空澄の方を向き


「は、はい!なんでしょうか!」


「貴方達、私たちに愚痴があるなら直接いいなさい」


「い、いえ!なんでもないです」


と彼女達が逃げていく。


「あーあ、別に言わなくてよかったのに、」


「何を言っている、あういう子達には灸を添えてやらなければいけないわ」


「まぁでも釣り合ってないのは事実だしな。」


「…そんなことないのに」ボソッ


「ん?なんか言ったか?」


「い、いえ!なんでもないわ!バイト遅れないように早くいきましょう!」


「お、おう」


 何故か空澄が急に早歩きになり、俺も一生懸命ついていった。


――――――――――――――――――――


「はあ、やっと着いた………」


しばらく歩き、山の中にある神社に着く。


「あら、ずいぶん早く着いたわね、貴方はまだバイトまで時間があるのだから休んでらっしゃい。」


「……そうだな、俺は休むよ、空澄はもう仕事か、頑張ってな」


「…ええ、仕事を頑張るのは当たり前よ」


「う、そうだな」


まるで俺はバイトを頑張ってないみたいに言うじゃないか。 



 俺は神社の横にあるthe・和の屋敷のような瓦で枯山水のある家の貸してもらっている一室で休むことにする。空澄、彼女はこの神社で巫女として働いている。そして俺はこの神社の神主の補佐役というバイトをしている。補佐というと大きな役目のように見えるが、お祓いの道具の準備や、お札を書いたり、絵馬を作ったりという仕事をするあまり労働とはいえない仕事である。しかしとても大事な仕事のため、俺はこの仕事に関しては一生懸命やっている。俺はこの仕事を精一杯やりたいと思っているし、橘家に恩返しをしたいと思っている。


「さて、俺ももうそろそろいくか」


神主の手伝いをする。といっても毎日仕事があるわけではない。今日は予定はないらしいので、参拝者に神社の案内をすることにした。 


――――――――――――――――――――



「あー、つかれたぁー、俺もしかして観光ガイド向いてる?」


 俺は案内が思いの外うまくいき、少し調子に乗っている。まぁ、たまにはいいだろう。

時刻は午後8時、すこし時間が遅くなったな。

が爆発してなきゃいいが……

 という俺の不安は見事的中することになる。


「ただいま帰りましたー」


一応他所向きのただいまをする。まぁ今家にはいないのだが……


「ゔゔゔゔぅ"………」


ん?なんだかゾンビのうめき声がきこえるなぁ、

だれだろう?と次は


「うっ、うっ、ふぇええええん、えっぐ、」


あれ、泣き声が聞こえるなぁ、


声の聞こえる先へいき、引き戸を開けると、


「あ、圭……待ってたよぉ…お腹すいた……」


 今これを見た君たちはだれだ?と思うだろう。

しかし彼女のことは君たちはよく知っている、

そう、空澄だよ。あ、遅れたが俺は斑鳩 いかるが けいって名前だよ。よろしく。


 ……話を戻すが、君たちもよく、人、場面によって態度を変える、いわばオンとオフがあるだろう。誰しも経験があるはずだ。そして、その、彼女は少しオンオフがのだ。…決して二重人格ではない。


「ねーぇ、ご飯作ってぇー」


オフの彼女はなんだかふわふわしている。

そして、めちゃくちゃかわいい。オンの時とは違うかわいさがある。


 俺は急いでご飯を作る。彼女は勉強博識、運動万能だが、まぁ完璧あるあるみたいなもので、家事ができない。そのため、俺がいつもご飯作ったり、洗濯したりするのだが、今日のように家に帰るのが遅れてしまうと、ときどき感情がしてしまうのだ。


 …とりあえず米を炊き、簡単に秋刀魚を焼き、

持っていく。一人前は神主さんにとっておくため、ラップして冷蔵庫に入れる。


「じゃあ、空澄、いただきます」


「いただきまーす♪」


かわいいなおい。


「ん!秋刀魚おいしい!ん!このほうれん草も美味しいね!」


「そうかそうか、ありがと」


「お礼をいいたいのは私の方だよー!ありがとっ!」


「あ、あぁ、」


やべー!!!!かわいいがすぎる!あああああ

俺も空澄をいただきますしちゃおっかな!?


…………………落ち着こう。


「って、この煮物……」


と彼女が急に苦い顔をし、ふきのとうの煮物をペイッと端っこに避け始めた。


「こら、ふきのとうたべなさい」


「うえぇ、圭、お母さんみたい……」


空澄はしぶしぶふきのとうを食べ、苦い顔をするのであった。あ、苦い顔もかわいかったよ(報告


――――――――――――――――――――



「……ごちそうさまでした。」


「ごちそうさまでした。」


 俺も空澄も満腹になり、少し空澄も落ち着いたみたいだ。


「お腹いっぱい!」


「そうだな、……あ、風呂沸かしたから先入ってこい」


「お、優しいねぇ、ありがと♪」


 ごめん、やっぱ治ってないかも(尊)


……先に空澄が入り、その後に俺が入った。

別に残り湯が欲しかったとかではない。綺麗なお湯に入ってもらいたかっただけだ。(本心

……まぁ、もっときれいになったお湯に俺は入ってしまったが(悪心


「ねぇ、たまには髪乾かしたげる」


ホレホレ、と膝に俺の頭を誘導する。


………逝ってきます(ゲス顔


 膝に頭を乗せると、ぷにっとしたふとももから

なんかよくわからないけど甘いにおいがして、

すごく脱力する。


すると、空澄がにこっと笑い、


「ふふっ、よしよし、いつでも家では頼ってね。」


と一言。しかし、当の俺はそれどころではなく、

あの柔らかな笑顔に見惚れていた。


俺はどちらの空澄もすきだ。結婚もしたい。

けどそれはできないこともわかっている。


彼女はだから。  





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オンオフ激しい巫女ちゃんは俺にだけデレる 雷麦 @raimugi0628

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