第4話

 僕が人を殺した……

その事へのショックが大きすぎてそれ以降の話は頭に入ってこなかった。この手は人を殺した手。この手は殺めてるんだ。汚い。汚い。死にたい。死にたい。何もかもが暗く考える事すら出来なくなった僕を夏向が静かに抱きしめる。

「だから、私がいるから大丈夫。」

なぜだか彼女のその言葉が安心するのと同時に恐怖を頭に植え付ける。なぜ夏向がいたら大丈夫なのか。僕はなぜ病院にいるのに警察は捕まえに来ないのか。殺したあと何があったのか。全てを知っているのは夏向だけなのか。疑問で溢れる僕の脳は僕の神経を食い殺していく。

「僕は、大丈夫なのかな。人を殺した人間でも」

大丈夫と言われた事の疑問を彼女へ突きつけるも夏向はすぐに口を開く。

「大丈夫って何回言えば分かるの?」

夏向は病室の外まで聞こえるぐらいの大きな声で僕に怒鳴った。これが彼女の裏なのかな?これが彼女の本当の中身なのかな。

彼女は咄嗟に謝るが、僕はどう反応していいのか分からず黙っていた。僕がどうしてこうなったのか理解しないといけないと強く決意した時がこの時だった。

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