第4話 成仏

 機体回収場所に着くと、飛行機より先にパイロットが陸へ戻っていた。ちょうどメンバーがインタビューを受けているところだった。番組スポンサーが無料配布している健康飲料を飲みながら、ぼくたちはその様子を見ていた。


〈……あの、先程パイロットが言っていたように、まずは、現行ルールでの新記録を出せて、本当に嬉しいです。よく頑張ってくれたと思います!〉

 収録会場の特大画面に、パイロットの顔が大きく映っている。その次に、他のメンバーが映った。ぐしゃぐしゃの顔で涙ぐむ人、互いに肩をたたく人……色々いる。みんな、あの1 分ちょっとのために今まで頑張ってきて、今日その成果が出たんだ。あの人たちにとって、ここはとても大切な場所なんだ。そのことが、ぼくにもちょっと伝わってきた。


 ちょっとだけ、分かった気がする。ずっと前にやってただけなのに、父さんがどうして鳥人間コンテストにこだわるのか。毎日仕事で疲れているのに、休みの日はいつも家でゴロゴロしているだけなのに、どうして今日は早起きしてまでここに来たがったのか……。ぼくがつまんなそうにしていることにも、少しは気づいてほしいけど。


「良かったなぁ。これでようやく、父さんも成仏できるかもしれない」

 すっきりした表情で、父さんはつぶやいた。

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