目を開くと、優しい木漏れ日が差し込んだ。

 

 「ここ、何処だろう?」


 見渡す限り、緑しかない。

 今までに、森には何度も行ったことはあるのだが、

 僕に少なくともこんな場所は知らない。

 

 意識はしっかりしていたので、まず顔を摘まんでみる。痛みはないようだ。

 飛び降りた記憶もある。今でも鮮明に思い出せる。


  となると、

 「夢かな?」

 

 考えても仕方ないので、僕は歩き回ることにした。

 と言うより、それ以外出来ることがなかった。


 散歩しながら分かったのだが、この森は人のてが加わっていない。それも、かなりの時間だ。

 木には他の木の枝が蔦のように絡み付き、通る道には、木の根が張り巡られて、苔のジュータンが出来ている。それに、広葉樹だけが生えている。


 幻想的なながめで、どこか寂しげだった。


 だが、疑問に思った。

 

 何故、こんな夢を見ているのかだ。


 こんな夢を見るような出来事に見覚えもなければ、望んですらいない。

 

 「最近、疲れてたからかな?」  


 誠四郎も疲れは感じていた。

 もしかしたら、無意識に望んでいたのかもしれない。


 そう区切りを着けて、ひたすら歩いた。




 どれくらい歩いただろう。感覚からして、6時間は歩いている。

 ずっと歩いていて飽きないか?と言われると、飽きてはいない。

 透華の学力に恥ずかしくないように、1日5時間ほどは勉強していた。


 それに、夢の中だからだろう。不思議と疲れもない。

 

 それで、6時間歩いた結果なのだが、人工の林が現れた。それも、今度は広葉樹みたいな針葉樹だ。

 生えた木は、進むにつれて小さくなって針葉樹だけが広がる。

 

 

 木の成長を逆再生しているみいたっだ。


 しばらく歩くと、今度は草原が現れた。それも、人工の森と同じように、背の高い草から背の低い草に変わっていく。そのうち芝生になった。


 その先は短い荒れ地。

 砂漠のように枯れ果てた土地が短い範囲で存在していた。

 

 その先には、二種類の草が混在している草原。


それぞれ、黄緑と少しだけ深い緑の草原だ。背の高さも違う。


 もう、僕には理解が及ばなかった。それぞれの空間の植生がばらばらで、限定的すぎる。


 「本当にここは、何処なんだ?」


 ボソッと純粋な疑問が口からこぼれる。


 すると、不意に後ろからトントンと肩をつつかれた。

 振り返ると、自分より少し年下の少年が立っていた。

 僕の見知った人に、こんな少年はいない。

 だが、何となく懐かしい顔立ちに感じた。

 この誰もいない世界で、話し相手もいなかったので、僕は少年に声をかけた。

 

 「君は、誰?」


 どうしてだろう?この少年に対して、初対面だと言うのにため口を聞いてしまう。

 それに、それを疑問に思ってない自分がいる。


 「それは、最後に言うよ。でも、僕は君のこと知ってる。」


 「どう言うこと?」


 「少し話をしよう。」


 「?わかった。」


 「最近、責任を感じることは無い?」


 「責任?」


 「そう、責任。」


 「ん~?透華のことかな。」


 「そうだね。君は幸崎さんのことで、負い目を感じている。じゃあ、何で?」 


 「それは、幸せにしてあげられなかったから。」


 「そっか、でも、それは責任から来るものなの?」

 

 「君が、僕に聞いてきたんじゃないの?」


 「それは、半分正解かな。でも、半分不正解。

  じゃあ、質問を変えよう。君は幸崎さんをどうしたい?」


 「幸せにしたい。笑っていてほしい。」

 即答する僕に、少年が少し嬉しそうになる。


 「それだよ、さっきの質問の答え。次行こう。」


 「君が幸崎さんのことで、選択した道は?」


 「透華が幸せならって、先輩に透華を任せた」


 「そこに君の意思はあるの?」 


 「ある。透華には、幸せになって欲しかったから。」


 「その意思は、本当に君がしたかったことなの?」

 

 「え?どう言うこと?」

 

 「君がしたかったのは、幸崎さんと〝幸せになる〟ことじゃないの?」 


 「それは…」

 

 「僕は君に幸せになって欲しい。僕に囚われないで欲しい。」

 

 「え?」

 

 一瞬、少年と弟が重なった。

 

 「君が幸せなら、僕たって幸せなんだよ。」


 昔、弟が良く言っていた。〝お兄ちゃんが幸せなら、僕も幸せ〟と。


 涙が溢れた。この少年は弟だったのだ。

 

 「確かに、他人の幸せが君を幸せにしてくれるかもしれない。でも、欲求がない幸せは、心から喜ぶことが出来ないものだよ。」 


 「それは、この世界で君が歩いてみてきたはずだよ。」 


 僕が目覚めた最初の天然森林。そこは心地よくても、どこか寂しげだった。 


 (そうか、僕は幸せになりたかったんだ。) 


 泣き出してしまう。こんな心地いい涙を流したのは、何年ぶりだろう。


 少年は泣き出した僕をぎゅっと抱き締めた。

 いや、もう少年ではなかった。僕が知っている弟の姿だった。


 「お兄ちゃん、幸せになってね」  


 そこで、視界が暗くなった。弟は最後、大好きと僕に笑いかけていた。


 


 











 視界が明るくなる。僕は気づけば涙を流していた。


 そこに弟はいない。

 

 「僕も大好きだよ、〝天心〟」

 

 それでも、弟に届くように僕は名前を呼んだ。



 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

 こんにちは、資格試験と中間試験が見事に重なりました、Sニックです。

 最近、勉強が辛いです。でも、皆さんも頑張ってると思い、必死に参考書みてます。

 なので、小説かくのは、ゆるじでくだざい~!

 

 まぁそれはともかく、皆さんに納得頂ければ幸いです。

 誤字脱字 改善点ありましたら、レビューや応援コメントに書き込んでください!

 最近、皆さんが報告してくれるので、とても助かってます!

 それでは、この作品を読んでくださりありがとうございます!またね!       

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