第24話 下山



その山は知っていた


毎年

遭難者が数人出る山だ


何故か新聞には載らない


山の名前を言えば

誰もが知っている山ではないかと思う


くだらない前置きはやめよう


山道に入って気付いたことは

時々道がなくなっては現れる


これ以上

進むのは止めよう


そう思って引き返すことに決めたのだが


留まって

この山で一夜を明かすのも良いか

そんな夢の様な気分になっていたのも確かだが


朝から歩きどうしで疲れていたせいもある

バックパックから珈琲を入れた水筒に手を出す


このまま死んでも悔いもないし

生きる意味もない


ビバーク

それも有りか

と思って珈琲を飲むと眠たくなってきた

かなり疲労していたのかもしれない


いけない!

帰らないと!

何を考えているのだ!


そう思って正気を取り戻した時

1匹の真っ白な猿が私の隣から去って行こうとした

舌打ちをしながら

舌打ちをした様な音だったかもしれない


彼が去って行った林の中には

数匹の猿達が待っていた

様な気がするが


私が下山できたのは夜中になっていた


たった2000メートル以下の山で

下山するまでに歩いた時間は

12時間をゆうに越えていた




これは私の経験で、夢兎を執筆するきっかけになった、個人の思い込みかもしれません。

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