第☆話 二人の人生
「あなた、私達どうやって出会ったか覚えてる?」
夕日が差し込むアパートの一室で、おっとりとした顔の女性が呟いた。
「あぁ、勿論。あれだろ、短大の学祭だろ?」
尋ねられた男は手に持つ会社の書類を机に置き、そう自慢げに返す。
「………明日の晩御飯は塩ご飯だけね。」
じとーっと男を見つめて彼女は呆れ顔で言う。
「えっ!?マジ?違うの!!?」
彼は心底驚いたという顔で、女の人に詰め寄った。
「………。」
変わらずジト目で見つめられた彼はこのままだと真面目に明日の夕飯が犠牲になると、頭をひねって考え始める。
「………あぁ!!相席バーだ!!」
そして、ポンと手鼓を打って彼は叫んだ。
「そうだよ。あと、声が大きい。」
ニッコリ頷き返しながらも、昔と何ら変わらないセリフで男を諌めた女の人。
「いやぁ懐かしいなぁ」
男はすまんと謝りながらも、しみじみとつぶやく。
もう短大のあの頃からは5年以上の月日が過ぎていた。
「そうだね」
女は少し膨れたお腹をさすって頷く。
「この子の名前、決まった?」
幸せ満面といった笑みで彼女は男には尋ねた。
彼女は妊娠していて、今は5ヶ月の手前。
膨れだしたお腹が少し辛くなりつつと、彼女はとても幸せだった。
「まだ早くないか?」
男も穏やかに笑いながら彼女のお腹を触る。
「こういうのは早目が良いの。」
女の人は彼に向き直ってゆっくりといった。
「そうか?………………俺、こういうのセンス無いんだけど?」
男は自分の子供の名前だから何かはつけたいけれど、自分にはセンスが無いと頭をかきながら笑う。
「うん、知ってる。だって、前に犬の名前ポチ太郎にしたじゃない。」
彼女は小さく笑いながら男を親愛に見つめた。
「………で、この子の名前は?」
男もその目線に気づき、見つめ返してそう尋ねる。
「まぁ、あとでゆっくり決めましょ。」
彼女は2.3秒考えた後に、にっこり微笑む。
「………俺に冷たくね?」
男は彼女の目を見て聞く。
それが本気ではない事は彼も彼女も分かっていて、
「こんなに優しくて可愛いお嫁さん捕まえて何言ってるんです?」
少し身を乗り出してそう笑いながら返した。
「はいはい、お前は世界一のお嫁さんですよ。」
彼らがここまで来るのにたくさん喧嘩もしたし、たくさん泣いたし、もちろんたくさん笑った。
相席したら、何時も無口な大学の同級生が来た…………俺は酔ってその子に告白してしまったらしい。 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n
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