桜吹雪

粋羽菜子

第1話

家が近所で、幼稚園が同じで、小学校が同じで、中学校が同じで、高校も同じで、今日一緒に卒業した私の親友。二人で永遠の親友だと言って笑いあったのは中学校の時だった。一生の友達。私の拠り所、私が安心できる場所、それが私にとっての茂木櫻子だ。今日、この学校を卒業して、私達は初めて別の場所に行く。それはとても心細いもので、私にとっていかに櫻子の存在が大きいのかあらためて確認できる。櫻子が座っていた席にそっと触れる。私の揺れ動く心情など知ったことかと、他の卒業生は窓の外で写真を撮りあったりと楽しげな様子を見せる。目元に熱が溜まり始めたのを察知して、慌てて窓から視線をそらす。その代わり、手芸が得意な櫻子が私にくれた手作りの人形をそっと握る。私の分と櫻子の分。櫻子の姿をした人形と私の姿をした人形。少し汚れた私の姿の人形を見て再び視界が歪み始める。今度は止めることはなく、自然に流れ行くままに涙を流す。二体の人形を櫻子の机の上において、そっとしゃがみこんで机に額を付ける。櫻子と一緒に過ごした、最後の場所。

「お疲れ様、櫻子。私はもう行かなくちゃダメなんだって。櫻子はずっと、私のたった一人の親友だよ。櫻子が作ってくれた人形、私が受け取ります。櫻子、ばいばい。私がそっちに行ったらいっぱいお土産話を持っていくよ。私の寿命が尽きたとき、また会おう。」

溢れでる涙を振り切るようにい勢いよく立ち上がると、ガラリと音を立てて窓を開ける。風に乗ってきた桜の花びら達が、私の頬をするりとなでていった。

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桜吹雪 粋羽菜子 @suwanako

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