第4話

第4話


冬場ということで夏樹が所属する野球部の活動は体力作りがメインになっていた。小学生の頃から初め、ずっと捕手として中学時代にはキャプテンとしても全国制覇に貢献した。


夏樹はこと野球となると表情、性格が一変する。彼は強豪校からの推薦を断り一般入試でこの学校に入ったが一年生ながら飛び抜けたセンスを発揮し正捕手として試合に出場していた。




side氷緒




冬休みということで本格的に野球ができなくなる前最後の交流試合が行われることになった。


当然氷緒は夏樹の試合を観戦しに来ていた。


夏樹は6番キャッチャーとして試合に出場していた。

後攻である夏樹チームは先に守備につく。


(何あの表情……。カッコ良すぎるよ!? 野球している時の夏樹ってあんな感じなんだ……)


氷緒の心は揺れていた。何せずっと好きだった相手と付き合うことになりその相手の意外な一面を見ることができたからだ。



状況は1回の表2アウトランナー1塁。1番、2番と内野ゴロに打ち取ったが3番打者の打球をサードがエラーしてしまった。



(2アウトからエラーで出たランナーは盗塁しやすい……。準備しておこう。それにこのランナー春の大会で走っていた。自身はあるはず。)

夏樹はそう考え少し腰を浮かした。


投手が投球モーションに入る。足を上げたと同時に案の定ランナーはスタートした。


(来たっ……!)


普通に行けば十分アウトにできる。夏樹はそう考えていたが投手の投げた球は夏樹の手前でバウンドする軌道だった。

普通の捕手ならしっかりとブロックして前に止め、ランナーの進塁は許すだろうが夏樹は勝負に出た。


ショートバウンドをうまく捌いた夏樹は流れるような動作で2塁へと送球する。


『アウトっ!』


審判がコールとともに手を挙げる。


ベンチが沸いた。

夏樹は監督や先輩に笑顔で背中をバシバシ叩かれ照れたように笑っていた。



(かっこいい……。私の彼氏……カッコ良すぎる!)


氷緒は夏樹チームのベンチよりも遥かに興奮していた。





この後も夏樹チームは得点を許さず2対0の完封勝利を収めた。





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