第3話 新しい出会い

今日の授業が終わり、なーちゃんに合コンに誘われた。


彼女いわく、

「あんたは校内じゃない方がモテるのよ!」

とのこと。


たかだか環境を変えたくらいで

あたしの非モテがどうにかなるだなんて思えない。

だけど、友達の中でも親友と呼ぶに相応しい

彼女が言ってくれた言葉を簡単に否定するのは嫌だ。


(モテないならモテないで、やっぱりねって感じだし、

もしモテたとしたら万々歳だもん)


念願の初彼ができるかもしれないのなら、

俄然気合いが入る。



「来週の土曜日だっけ……」



お世辞にもあたしは可愛い面をしてないし、

お洒落な服とやらも持ち合わせていない。

メイクなんて論外だ。


一度だけ挑戦してみたら、

なーちゃんが生暖かい目で

「華夷奈……あんたは素顔の方がいいわよ」

と諭されてしまったことがある。

よほど見るに耐えなかったに違いない。



でも、合コンというからには目一杯

お洒落をしていきたい。



「なーちゃんはメイクできるし、

 ちょっとだけしてもらおうかな?」



もしも。

いつか、大好きな人とデートをする、

そんな日のために最低限のメイクは覚えておきたいから。


そんな淡い妄想を抱いて、

なーちゃんへメッセージアプリで

ショッピングのお誘いをすると二つ返事が返ってきたのだった。



  *3日後*



今日はなーちゃんと合コンの用の服、

それからメイク道具を買いに来た。


(どんなのにしよっかな?)


流行り廃りには疎いあたしだけれど、

ファッションセンスは悪くないと自負している。


いかにも陽キャっぽい店員をかわしつつ、

店の壁側に陳列されていたワンピースコーナーで

足を止めた。


目に留まったのは、

薄桃色の小花柄ワンピース。

キャミソールの紐くらい細い紐で

ハンガーにかけられているそれは

控えめに言っても高露出だった。


(肩出しで、デコルテラインは総レース……

 しかも竹は膝上15cm以上かぁ)


なかなかに攻めた服で

勝負服と呼ぶにぴったりだ。


いつもなら

「どうせあたしにはこんな派手な服似合わないから」

と敬遠していただろう。


でもなぜか今日は目が離せないでいた。




それからどれくらいそうしていたのだろう、

店内を一周してきたらしいなーちゃんが

あたしの背後からにょきっと出現した。



「か~いなっ、いいの見つかったの?」


「ぇ、ぉうわっっ!?」



すっかり一人の世界に入り込んでいたあたしは

彼女の登場に驚き、

すっ頓狂な声をあげてしまった。


あまりの驚きように彼女の方が

目を丸くしていたくらいだ。



「どうしたの?

そんなに驚くことだった?」


「ううん、違うの。ただぼーっとしちゃってて……」


「この服にそんなに見とれちゃってたんだ?」



彼女の悪戯めいた問いかけに

あたしは頬を赤くした。



「う、うん……でもあたしなんかが

こんな華やかなの似合わないよね……」



あたしの卑屈な態度に呆れたように

なーちゃんは息を吐いた。



「うちはなんも言ってないし、

これ、華夷奈には似合うよ。ゼッタイ」


「そ、そなんだ……////」


「なに照れてんのよ」


「べ、別にいいでしょ!

 そんなことより、なーちゃんの選んだげる!!」


「はいはい」



なーちゃんはショッピング中

終始ニヤニヤしていたけれど、

だって仕方がないじゃない。

親友と思ってる子から「ゼッタイ」似合うなんて

そんな褒め言葉もらえたら、


(嬉しくて溶けちゃいそうになるんだよ……)



好きな人からの言葉じゃないのに

たったこれだけのことで喜びを噛み締められる

あたしはきっと自己肯定感が低いんだろう。

自覚しているだけでも

自分の嫌いなとこがたくさんあって、

両手では足りない。



「かいな~~?

なに、ぼさっとしてんの?

うちの服見繕ってくれるんでしょ、さっさと行くよ」


「うん、今行く!」



だからきっと、今いてくれる人たちが

大好きで仕方ないんだ。

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