狭間にて

 管理AIは考えた。


 狭間に住む19歳達の、それぞれが抱えた悩みや不安を、丸ごと抱えたこの街の未来を考えた。


 一つ一つ残した、彼らとの対話記録を、いっぺんに流しながら、考えた。



「大人なのか子供なのか分からない」


「成人年齢なんか名ばかり」


「まだ子供でいたい」


「大人は嫌いだ、嫌いなものになりたくない」


「友人関係がめんどくさい」


「将来に希望も絶望もない」


「過去1番憂鬱な年」


「別に19歳が特別不幸とも思わない」



それぞれの考えを、意見を聞きながら、AIは、街の宣言文を考え直す事にした。



 一般的な子供扱いからは離れ、しかし成人としては扱われない年の19歳。

 子供から大人に変化する、ちょうど中間地点に立つ彼らのための街。



 しかし成人年齢は変わる。


 18歳で皆が成人と認められる様になる。


 だが、それで中身が大きく変わるだろうか。


 法的には成人でも、世間からは、まだ仲間扱いはされないだろう。

 同じ成人のはずなのに、仲間外れにされてる気分を味わう子はきっと出てくる。



 大切なのは、数字ではなく本質なのだろう。




 子供と成人の狭間を彷徨う19歳はもうすぐ絶滅する。


 しかし、成人と真成人の狭間をさまよう19歳、18歳が、新しく誕生するのだ。




 AIは結論を出した。



 

・・・



 この街はまだなくならない。


 



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はざま 夢星 一 @yumenoyume

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