第5話 4-騎士見習いはじめました。

葵は、騎士見習いとしての生活がはじまった。日本人であることから、団長の白檀から、特例として、教育係がマノーリアと梔子になった。この世界に来て知り合った、ふたりの美少女が教育係とは、運がいいと葵は思った。騎士団全体の朝礼が終わり、各隊に別れ、訓練が開始となる。今回使節団の中にマノーリアの隊は参加していない、マノーリアは、騎士長兼任で皇女近衛騎士隊の隊長である。隊員である他の騎士は、自国で皇女の近衛をしている。一方梔子は、騎士団の中でも、数少ない斥候隊の為、隊員の騎士は、全員選抜されている。その為、梔子は教育係とはいえ、自分の隊も管理しなければならないので、葵とずっとは、いられなかった。白檀は、今日はふたりは葵と、とは言っていたが、やはり梔子も隊長、半日は、隊の訓練を確認したいとの事だった。


「クーは、今日何時から、隊を抜けられるかしら?」

「そうだね~お昼は一緒に食べれると思うよ」

「それじゃ、葵くんの武器と防具は、クーと合流してからにしましょう。わたしも、人の武器と防具選びは苦手なので…」

「了解~!そこは任せておいて~!その代わり、午前中の講義はよろしくね!葵くん頑張ってね~!」

「梔子隊長、承知致しました!」


 葵は、ピッと敬礼し、梔子を見送る、それを見て、ふたりもクスクスと小さく笑う。その後、講義を行う為、2階のマノーリアの部屋に行く途中、マノーリアが、頬を赤く染め、モジモジしながら、葵に謝罪してきた。


「葵くん、朝はごめんなさい…痛かったよね?」


 マノーリアは、幼児帰りした口調で、申し訳なさそうに、上目遣いをする。天然物のあざとい仕草、これは、許すも何もご褒美でしかない。


「気にしてないよ、俺も酒によってたし、いくら自室とはいえ、マナー違反だったよ、こちらこそゴメン」

「謝らないで、昨日は、勝手に決闘させちゃったこともあるし…」

「そういえば、マニーに何か、してもらうことにしてたね?」


 葵は、おもしろくなって、マノーリアをからかいはじめる


「えっ… その… えっと… ェ… エッチなことじゃなければ… 」


 マノーリアが、自分で言い出して、自爆している。思考回路がエラーしているようだ。


「あの… その… クーとか他の女性騎士の人達にも、言われたんだけど… 朝、男の人は… その… 勝手にそうなるというか… あんな… ふうになっちゃうというか… 」


 朝の事故の時に、葵の全裸を見てひっぱたかれたのではなく、葵の物は、二日酔いもせずに、元気だったのを、マノーリアは見てしまったようだ。葵は気がついた、マノーリアや梔子が、免疫がないのに、異様にその辺りにふれようとする感じ、耳年増になっている。双子の妹も似たような時期があった。特にこのふたりは、すでに騎士団に入団し、騎士団の中でも、職位を持ち、実力もある。その上、この容姿であれば、男もよりつかない。同年代の他の女性よりも、その辺の成長は、遅れているのだろう。時期が来なければ、なおらないであろう。


「健全な男子の朝!ただそれだけだよ。見るものでもないし、見せるものでもない、気にし過ぎ! 事故! 事故! 見たいなら、見せるけど俺は…? それと今度時間ある時に、デートしようよ! それで決闘の件はなかったって事で… 」

「み… 見せなくていい! えっ? デ… デート? 」

「そっ…デート、まぁ、ふたりだと、マニーが緊張するなら、昨日みたいに3人でもかまわないよ!」


 マノーリアが口を尖らせムッ~っと、葵を睨んでいたが、デートと聞いてたじろぐ、ご褒美タイムだ。あまりからかっていても、講義がはじまらないので、マノーリアの部屋に向かう。

 マノーリアの部屋は、騎士長でも葵と同じ間取りだ。そもそも、葵に用意された部屋が、士官用だから当然同じになる。

 講義の内容は、国と政治の事や軍の事そして騎士団のことだった。

 ロスビナス皇国の政治は、元老院議員制で、議長がトップで成り立っている。皇女は、元老院が正しく運営されているか、監視する役目と、国の象徴と世界平和の祈り、そして結界の維持管理がある。結界の維持管理は便宜的なもので、業務のほとんどは儀式が多い。厄災が起こる前兆を、神器である、女神の鏡が、写し出すので、儀式が慣例的とも言い難く、深く信仰されている。

 ロスビナス皇国は、徴兵制度をとっている。16歳から、一年間性別に関係なく、徴兵され、予備役は2年とされている。現在は、ストロングスピア防衛戦以降、守星連盟の推奨として、ほとんどの国が、徴兵制度を導入している。皇国軍は、正規兵数は20万人・予備役兵が100万人となる。皇国の人口は6000万人おり、防衛戦のような、有事があった場合は、守星連盟より、各国へ、守星総動員体制が発令され、民兵がさらに加わる。冒険者は有事の際は、民兵とされる。騎士団は、軍内部の部隊であり、総勢2万人の騎士がいる。騎士団への入団は志願となり、その門は、広く開かれているが、基準値以上の魔力が必要となる。国内の主要都市やストロングスピア城塞都市に配属されている。戦闘時は騎士団が先陣をきる。

 マノーリアの講義で午前中は終了し、食堂で梔子と合流し、午後は武器・防具を新調することとなった。


「葵くん、その剣、何度観ても綺麗だよね~」

「ベルガモットお兄様が、団長になられた時に、オーダーされた剣よ」

「ベルガモット団長は、中古なんて言ってたけど、全然新しいよね?」

「お兄様は、槍を普段使うから、槍が不利な状況、室内とか、ダンジョンとかでしか、使わなかったんじゃないかしら? リーフ家は、代々、槍の騎士ですから、わたしの父も槍の騎士だったのよ! 」


 マノーリアは、少し誇らしげな表情で話す。


「へぇ~、マニーも槍?そういえば、マニーは武器装備してないね?」

「昨日は、会合だったし、わたしは薙刀よ、父から槍の手解きはされたけど、薙刀の方がわたしには、向いていたみたい。」


 葵が、ベルガモットより、譲り受けた剣は、オーダーメイドの一品物で、ブロードソードに類する直剣だが、剣先は細く鋭く尖った形状をしており、エストックに近い形状をしているがそこまで長くなく、全長は90センチほどでブロードソードとしては、若干長めに作られている。ガード・ナックルガードの装飾は、最低限に抑えられており、実用的な美しさがある。グリップと鞘に同色の皮が巻かれており、鞘の両端と中間に、ナックルガードと同色の金属で補強されている。華美な剣ではなく、シンプルなデザインが、逆に葵には美しさを感じさせた。


「葵くんの闘い方、だと、ピッタリな剣だね! まぁ、ベルガモット団長も、闘ってる姿を見て、この剣が良いと思ったんだろうけどね」

「そうなの? 」

「葵くんは、横薙ぎや突きの攻撃が多いからね?でも、これからは少し応用していかないと、強い相手だと、攻撃が読まれちゃうからね! 」


 梔子が人差し指を立てながら、葵に助言する。そうしているうちにに、3人は、臨時の騎士団装備庫に到着する。


「まずは、魔装衣からかな~ 」

「魔装衣? 」

「これこれ! 」


 梔子が自分の服をつまみ、葵に見せるが、マノーリアが詳しく説明する。魔装衣とは、皇国騎士団が採用している。支給される衣服で、ロスビナスに生息する、モンスターの生糸から作られる生地に、魔法をコーティングする事で、合金並みの強度を持つ生地となり、その生地で作られる衣服を魔装衣とよぶ。ロスビナス皇国の産業の一つである。


「だから、ロスビナスの騎士団は、ここの騎士団より、武具が軽装なのか? 」

「そうね。正解! 次は胸当てとブーツにそれと、グローブね」


 マノーリアが、てきぱきと揃えて行く、するとマノーリアから、葵に質問がなげられる。


「葵くん、盾は使う? でも、大きいのはむずかしいから、バックラーかしら? 」

「防御力は高めたいから、盾は欲しいけど、手がふさがるのは、ちょっと嫌かな、腕に固定式のも、外れそうで心許ないかな? 」

「クー何かオススメの防具ある? 」

「じゃあ、これは? 」


 梔子が、提案したのは、肘から手先まで覆う、ガントレットだが、通常の物より、頑丈に作られており、盾のかわりに使用するようにできている。葵は一目惚れする。


「これいい! イメージ通り! 」

「じゃあ、着替えてみましょうか」


 葵は、マノーリアに無言で脱いで良いのか?尋ねる。マノーリアは、葵が何を言いたいのか、気がつき頬を赤く染める。


「き… 着替えるくらい、わたしだって平気だもん! 」


 マノーリアが口を尖らせ、葵に返すが、幼児帰りした口調なので、おそらく朝の事故をまた思い出したのだろうと葵は思った。

 着替えが終わり、葵は鏡を見て唸る。


「なんか、異世界って感じ! 」


 葵は、ふと脱ぎ捨てた服を眺め、こちらの世界の服だと気がつく。異世界転移はカラダごど来てないのかな? 前のカラダはどうなった? と疑問に思う。もしくは服だけ変わってるのか? 答えはでないので、思考を切り替える。


「後は、コートとね、クー!サブの武器選びお願いできる?」

「ハイハ~イ! どうしようか? 」

「ショートソードとか? 」

「サブって言っても、常時携帯の副装備だからね。ブロードソードと長さが、ほとんど変わらない副装備は、邪魔だから携帯しないでしょ?あたしみたいに、二刀流する? 」

「ショートソードってもっと短いと思ってた」

「それは、ダガーとかナイフになるかな?」

「クーのは、ショートソードになるの?」

「そう! あたしのは、ショートソードになるね。でも、あたしのも、オーダーメイドの一品物だから、ショートソードの中では短い剣になるね。あたしも、この2本以外にナイフも持ってるよ。葵くんがイメージしているのは、こっちじゃない? 」


 梔子が、ダガーやナイフが置いてある場所を指し示す。


「こっちだね! これが良いかな? 」


 葵は、40センチ位のダガーを選び、ブロードソードに近い色合いの物を手に取る。


「後は、作業用のナイフとバックだね。どれがいい? 」

「クーみたいなのが使いやすそうだけど…」

「じゃあ~これが良いかな? 」


 梔子が手にとって、葵に渡したのは、ウエストバックのようになっており、ダガーが差し込め、収納できる。グリップだけ、バックから出ていて、手をまわせば、ダガーが抜ける。外側に、作業用ナイフや少量の小物が入れられるようになっている、革のバックだ。小さな革製の小物入れを2つを、更に梔子から渡される。


「これは?」

「ポーションパックね。腰回りとかベルトに着けてね。葵くんは魔法を使えないから、ふたつあって良いと思う。ひとつに5本収納できるから」

「ヒール6本と、マジックは、葵くんはいらないから~、ポイズンが解毒薬ね。とパラライシスは解麻痺薬を2本づつかな。葵くんが、騎士っぽくなってきたね~どう?マニー」

「素敵な騎士様になったわ!では、騎士様!装備が揃ったので、手合わせいただこうかしら?」

「えっ?」

「教育係としては、葵くんの今の実力を知っておかないと、ダメでしょ?」

「マニーそれはおもしろいね~」

「ハ… ハハ… トレーニングとか基本姿勢とかからじゃないの?」

「さっそく、演習場に行こう!」

「じゃあ~わたしも装備してくるね!」

「なんか?マニーが嬉しそうなんだけど…」


 各々準備ができ3人は演習場に集合した。マノーリアは薙刀を側の壁に縦置き、葵の前に立つ。


「葵くん、今日はハンデをあげるわ!わたしは副装備のレイピアを使用するわね!」

「それ…ハンデになってないよね?」

「マニーはレイピアでも、皇国騎士団で10位以内に入るね。」

「ハンデじゃないじゃん!」

「葵くん、殺すつもりで来なさい!お互い傷つけても、回復魔法をかけられるから、大丈夫だから!」

「ふたりとも準備は良いかな?ヨーイはじめ~!」


 マノーリアが突っ込んで来て、葵に突きの連撃をくり出す。葵は想定していた為、バックステップし回避する。マノーリアは回避されたと認識し、攻撃を中止すると、次は葵が仕掛ける 。マノーリアの付き出していた、レイピアを払い葵がつめ、突きをくり出す。


「お見通しよ!」


 マノーリアは、つめて来るのを読んでおり、左にステップし、葵の後ろをとり、すかさず攻撃に移る。葵は回避しかできない。


「もう、終わっちゃうわよ!」

「クソ!」


 葵はすぐに向き直り、後方にバックステップする。葵は策を思考し、マノーリアを見て隙をうかがう。

(さすが、騎士長ってところか?隙がない、回避していても、いつかはやられる。何か手はないか?)


 葵は、ひとつの策を思案する。マノーリアに勝てるとは思わないが、一手くらい、マノーリアに当てたい。マノーリアがつめてくる。葵は、左手のガントレットで、突きの猛攻に耐えながら、ブロードソードで突き・横薙ぎ・振り下ろしを変則的にくり出す。マノーリアは、盾を装備していないので、レイピアで払うか、回避するしかない。攻撃の回数が明らかに落ちる。葵は気がつく、マノーリアの主装備は薙刀であり、相手との距離をとり戦闘するが、今は近接戦闘だ、マノーリアが好きではないはず、現に攻撃は減り、煩わしそうに回避した。であるならば、葵は今まで回避していたのは、マノーリアの闘いやすい状況を作っていた。あえて積極的に、近接戦闘するべきと思考しなおす。

 回避したマノーリアを追うように、間合いつめて、猛攻に転じる。マノーリアは回避しながらも、平然と攻撃を払いつつ、突きの攻撃をくり出してくる。ガントレットで防御しつつ更につめる。マノーリアが大きくバックステップし、間合いをとる。


「そろそろ、決着つけましょうか?」

「絶対に一当て当てて見せる!」


 マノーリアが攻撃を仕掛け、葵は今回はガントレットでなく、ブロードソードで鍔迫り合いに持ち込み、攻撃を止め、すかさず左手でダガーを、マノーリアの胸に突き立てる。マノーリアは回避したものの、そこで梔子の声が響く


「まて!マニーが、手加減してるとは言え、マニーに一撃当てたのは、評価に値するね~」

「葵くん、やっぱり見込みあるわね!」

「手加減されてるとは、思ったけど…」

「それはそうでしょ~!マニーは、突きの攻撃しかしてないよ~レイピアも二刀刃だよ、他の攻撃方法もあるでしょ!それに魔法を封じているだからさぁ~」

「そりゃそうだ!やっぱりマニーも強いな~」

「騎士見習い初日で、ここまでできたら、優秀な方よ!最初の一手で音をあげる見習いも多いのよ」

「じぁ~次はあたしの番かなぁ~」


 梔子がイタズラ猫の顔で葵の顔を覗きこむ。


「クー待って、葵くんにヒールかけるわ」

「そこまで、キズとかないよ」

「梔子隊長が稽古つけてくれるのだから、万全で挑まないとね!」


 マノーリアが頑張って!と、胸の前で両手を組む、次は、葵の胸に拳を当て健闘の祈りを捧げる。


「わたしに、一撃当てたこと、自信持ってね!クーのスピードに気をつけてね!互いに敬意をはじめ!」


 梔子が、はじめの合図と共に、葵の間合いに入り込む、2本のショートソードから、くり出される攻撃は、多方向からくるように感じ、防御に徹するしかなく打ち返しができない、葵は、一本のショートソードをブロードソードで防ぎ、もう一本をガントレットで受け、左手に忍ばせたダガーを突き立てるが、梔子に見抜かれる。


「葵くん!あまーい!あたし見てたんだから、バレバレ!」


 梔子は、その場でバク転する。その反動で、葵の手からブロードソードが離れ、数メートル先に突き刺さる。


「残念でした~ あたしの副装備のショートソードの理解が足りないよぉ~ 」


 すぐに、葵はダガーを右手に持ちかえる、梔子の一本のショートソードはソードブレイカーで、刃の部分にカギ上の引っ掛かりの形状がある。それでバク転した際に、持っていかれた。マノーリアと違い、近接戦闘は梔子の得意とする戦闘範囲、ダガーだけでは、さらに近接が必要となる、ブロードソードを回収しなければ、葵は一撃も攻撃を与えられない。


「さぁ~葵くんどうする~? 」


 一目散に、ブロードソードを取りに行けば、梔子に攻撃を受けながらになる。


(攻撃は最大の防御って本当か、妙案は浮かばない)


 葵は、ブロードソードを方向に向きいつつ、梔子を警戒するが、梔子は身体能力を発揮し、大きくジャンプし、ブロードソードと葵の間に立つ、葵は改めて、梔子から距離を取る。ふと、武器になりそうなものが、もう一本あることに気がつく、梔子に、こちらが気づいたことに悟られないように、ダガーで闘う姿勢をとる。


(クーがジャンプした時がチャンスかも?ブラフか…?)


 葵は、梔子の攻撃を誘導する。


「あっー!妙案が思いつかん!クー決着着けるぞ!ダガーで一撃与えるからな!」

「あたしに、近接戦闘で勝てるわけないでしょ!ちゃんと考えなよ~!」

「もっと手加減してよぉ~!だって思いつくの、クーのしっぽ掴むくらい思いつかないんだよ~!」

「な…なに言ってるの!」


 梔子が、頬を赤く染め、お尻を隠すようにしっぽ隠す。マノーリアも口に手を抑え、頬を赤く染めている。葵には、理解ができないが、おそらく今葵が言ったのは、「おっぱいかお尻さわるしか、攻撃方法がない!」っと言ってるんだろうな?とふたりの態度を見て納得する。それなら、しっぽ隠せば良いのにとも思った。


(これで、俺のブラフに乗っかったかな?)


「エッチな事を言う葵くんは成敗する!」

「近づいたら、握るからな!」

「簡単には、さわらせるか~!」


 梔子はまんまと、葵に乗せられ、ジャンプし一気につめてくる、葵は梔子が避けられないギリギリまで引き付け、作業用ナイフを取り出し、梔子に目掛けて投げつけ、ブロードソードの方向へ、受身をとるように転がる。梔子が仰け反るように、ナイフを避け、体制を崩しつつも着地する。ブロードソードを手に取った葵は、持っていたダガーを着地寸前の梔子に投げつける。梔子は、とっさにショートソードで払いしのぐが、マノーリアの声が響く。


「まて!葵くんちょっとズルいけど、クーにブラフをかけたのは、賢い判断ね、作業ナイフを武器に転用したのも機転がきいて、良いと思うわ!」

「葵くんのスケベ~!ズルいぞ!」

「あの~その感覚が、俺わかんないだけど、そんなにしっぽさわるのいけないの?」

「あっ…あたりまえでしょ!しっぽさわって良いのは、添い遂げる相手だけなんだから!葵くんは、あたしと結婚してくれるの!昨日は事故だから、仕方ないけど、ホントに安易にさわるなら怒るからね!」


 梔子は口を尖らせ、葵をムッと睨み付ける。その目は、恥じらいとともに涙目で訴える。説明されてもあまり実感はわかないが、結婚と言われると、微妙な気分になるので、素直に謝ることにする。


「そこまで大切なことなんだ…ゴメンな!」

「葵くんは、知らなかったのは、わかるけど…凄く恥ずかしいんだからね!もう言わないで!」

「葵くん、女性に対して、本当に言わないでね。トラブルの原因になるから…」


 マノーリアにまで念をおされる。


「わかったって、もう言わないよ!」

「罰として、演習場外周10周…装備全部着けてだから…」

「えっ!?」


 マジで!と葵は梔子見るが、梔子は本気らしい、さらに葵は勘弁!と手を合わせるが、梔子は許さず、マノーリアも仕方ないよねと、葵の胸に拳を当て健闘を祈る。梔子がピッとし葵を直視する


「傾注!神無月葵、騎士見習い、騎士たる精神を磨く為に、演習場外周10周を命ずる、歩いた場合は、その都度1周追加だ!命令を理解できたなら、即、行動に移れ!」


 演習場に、梔子の声が響きわたる、演習場で練習している騎士達も気がつき、こちらの方向を見ている。演習場は一周1.5キロなので、15キロになる。しっぽおさわり発言の罰となった。葵は、転移前に走っていたので、そこまで苦にならなかったが、出会った美少女ふたりは、案外ドSなんだなぁと思った。葵は、想定済みだったが、夕飯の時に、団長の白檀に腹を抱えて爆笑されるのであった。


「だから…笑いすぎっすよ!」

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