第4話 3-騎士見習いになろうかと思います。

その騎士は、たたずまいから、品位があることがわかる。整った顔立ちの騎士、赤毛の長髪で、1つに後ろで束ねている、目の色は茶色で、180センチくらいの身長があり、男でも見惚れるくらいの伊達男だ。


「ベルガモットお兄様!」

「マノーリア!理由は、決闘が終わってから聞く、お前の事だ、私を納得させられる理由が、あるのであろう?」

「はい…お兄様」

「まぁ、この国とウチの、両騎士団長が立ち会いの決闘だ。問題にならんだろうよ」

「ビャク兄! 」

「あ~? 誰? 」


 もう1人騎士と言うよりは、サムライのような風貌の、短髪の茶色髪で、その頭には犬耳があり、しっぽがはえている。目の色は赤く、身長185センチくらいあり、サムライに見えるのはおそらく、梔子やマノーリアと同様に帯が巻かれて、着物ように見える衣類を着用している。袴まのような衣類を履き、足元はブーツを履いている。胸当てと手足に、軽装の防具を装備している。さらに長い刀を地面に立て、もたれている。


(坂本竜馬?お願いだから、~ぜよって語尾につけないで、ツボに入って決闘どころじゃなくなる~)


 葵は、顔面に真顔を貼り付けるが、失敗し顔が緩む、その顔見て野次馬が声を漏らす。


「あいつ、この状況で、笑ってやがる!」

「あいつ、石無しだよ、黒目で石を持ってねよ」


 葵は、石無しって言われても、特にまだ不快に感じないが、案外、日本人って、すぐにわかるもんなんだなぁ~っと感心する。気にせず、梔子に確認する。


「誰さんと誰さん?恐らく1人は、団長さんなんだろうなぁ~くらいには想像はつくけど…」

「正解。うちの団長ともう1人は、ここの騎士団長のベルガモットさん。マノーリアの従兄弟のお兄様です。」


 両騎士団長が葵に近づき声をかける。


「キミが、葵・神無月で間違いないな。私はマノーリアの従兄弟で、ベルガモット・リーフだ。この国の騎士団長をしている。マノーリアが無謀な真似をするとは思わないが、何か策があるのか?」

「はい。はじめまして、いえ、正直俺も困ってます。マニーがなんで、あんな事言ったのか…」

「俺のことは、ふたりから聞いてるよな。団長の文月白檀だ、よろしくな!刀かしてやりたいが、俺のはこれだからな、さすがになぁ?騎士見習いになるだってな!力を見せてくれ、ゴブリン7匹討伐は、伊達じゃないだろ?」


 白檀は自分の長い大太刀に目を向け苦笑する。葵は語尾が普通で残念に思うが、顔に出さないように、真顔を作るように意識する。


「まぁ、まぐれでしょうけど」

「それを聞いて、安心した。葵、それはまぐれとは言わない。私の剣を貸そう。騎士にとって剣がどういう物かは、わかってくれるな?」

「合ってるか、わかりませんが、ベルガモットさんの命預かります!」

「合いわかった!葵に預けるぞ」


ベルガモットは、葵の胸に拳をあて健闘を祈る。白檀が葵の肩に腕を回して、小声でささやく。


「決闘は、最後までたってたヤツが勝ちだ。綺麗な勝ちにこだわるな!卑怯と言われても、立ってりゃいいんだ、戦場でも同じだ!行ってこい!」


 白檀が葵の背中をたたき、気合いを入れる。


「俺が立会人をする、いいか?」

「騎士さんよぉ~俺は何でもかまわん。早くこいつに、石畳の味を味わさせてぇ~んだよ、早くしてくれ!」

「わかった。では、今から両者決闘を行う、よいか?どちらかが、敗北を認めるか、戦意がなくなるまで行う。死に至らしめる攻撃は、俺かあの騎士が、実力で阻止する。よいな!」


 相手の冒険者は、葵は175センチだが、相手は190センチくらいある、大男だ。重厚で派手な鎧を着ており、ジャイアントバトルアックスを装備している。葵は相手を観察し、ふと相手の装備に違和感を感じる。鎧が綺麗すぎるのだ、手入れをしっかりしているわけではなく。ほとんど着ていないか、新調した鎧…葵はさらに気づく、自称…冒険者ランカーの大男の装備は、バトルアックスで右利き、しかし、鎧の右肩に跡がない、鎧をいためたくないなら、バトルアックスを肩に乗せる為の工夫もされているはず。それもない。怪力で肩に乗せないわけでもない、相手は人耳。現に先程は肩に乗せていた。他の装備はなく、ショートソードやダガーすら、待っていない。虚勢をはったバカだと気づく。


(マニー、そう言ってくれりゃいいのに…挑発してみるか)


「冒険者ランカーさん、ゴブリン一度に何匹倒したことある?」

「俺の強さを知りたいのか?俺の強さを理解したところで、お前を叩きのめすのは変わらん。俺は一度に1人で10匹倒したことあるぜ!どうだ?許しを乞いたくなったか?」


 明らかな虚勢、普通の兵士や見習い騎士で5匹が限界。倍の数を倒せる強者なら、この街の騎士団長のベルガモットが知らない訳がない、騎士団入団の声がかかってもおかしくないし、騎士団に入らなくても、何かしらで協力要請はあるはず。葵は虚勢に乗っかり、葵も負けじとブラフをかける。


「それは凄い!俺は7匹だ!今日の午前中にな、良い闘いができそうだ。ところで、俺が何者かわかるか?」

「はぁ?お前…石無しか?」

「そうだ、俺は石無しだ!石無しの実力知らないだろ?」

「魔力のない、石無しに何ができるって言うんだ?」

「魔法のない世界には、この世界にとって変わるものがあると思わないか?」

「なにィ…?」

「石無しの国、名前は日本だそのなの由来は、この国の我々武人の術によるもの…」


 葵は、ブラフを続ける、左手の2本指を口元に持っていき、テキトーに何か唱えるように囁く


(なんか適当に呪文的なヤツを…じいちゃんの葬式で聞いたお経ってこんな感じか?)


「我が信仰の神、災いをもたらす、あのものの、力を封じ込め、我に力を与えたまえ!はんにゃ~はらぁ~みぃ~たぁ~」

「なにも、おきねぇ~じゃねぇ~か」

「魔法のように、目に見えるものしか、お前は信じられんのか?哀れではないか、俺は異世界の民。石無しだ、お前が理解できない力を持っていても、おかしくないだろぉ?」


 葵は男に剣で指し示し、気持ち声のトーンを下げ、さらにハッタリを重ねる。葵自身も茶番劇にしかしおもえなくなったきた。


「お前程度には、もったいないが、すでに勝敗は決まった!」


(おっ、けっこう、こんな子供だましを真に受けてる。どちらかと言うと、感情を逆撫でさせるつもりだったけど、それならそれで…警戒するのは、魔法くらいか?)


 男は同様を隠しきれない、若干声が浮わついている。


「はっ、そ、そ、そんなハッタリに騙されるか!」


 白檀の声が響き渡る。


「始め~!」


 先に、仕掛けてきたのは男からだった。男は葵をめがけて、突進し、バトルアックスで、殴りつけようとするが、その速度は遅い。経験の少ない、葵ですら理解している。バトルアックスは重い。その為、振りかぶる時に、動作が大きくなる。自分で間合いを詰めたら、敵に懐に入られるリスクがある。そのリスクを魔法を使って、遊撃するか、防御を強化するなどのリスクマネジメントをするかと思えば、特に何もない。であれば、間合いを詰めさせなければいい。葵は、相手を中心に右に回る。男は右利きの上、左肩からは、振り下ろしてこない。葵はギリギリの間合いで、できるだけ、男にバトルアックスを振るわせる。男は葵に一撃も与えられないまま、肩で息をしはじめる。


「ちょこまかと、逃げやがって~」


 葵は、男が頭にイラつきはじめて、思考が鈍くなってきたと判断する。葵は脇に、あった花壇から、一握り土を拝借する。向かってきた男が、バトルアックスを振り上げた瞬間に、葵は握っていた土を、男の顔に目掛けてばらまき、男の視界を狭めた瞬間に、脇腹に一撃食らわす。当然、鎧があるので、致命傷になることないが、男の体制が崩れる、さらに、喉元に突きを繰り出すのと同時に、男の左足を払う。男はバランスを崩した上に、振り上げたバトルアックスの重さで、後ろに倒れ込む。倒れた男に、葵は剣を喉元にあてる。


「それまで、勝負あった!」


 白檀が葵の勝利を判定し、決闘終了を口にしたが、男は周りにいた、手下に命令する。


「俺に逆らいやがって!このクソガキを捕まえて、殴り殺してやる。お前らガキを捕まえろ!」


 手下が葵に近づこうとすると、間に白檀が入る。


「決闘の勝敗は、決まったって言ったよな?それとも、俺がロスビナス国、騎士団長と知っての狼藉かぁ?相手になるぞ」


 白檀が名乗って、手下の1人が、恐れおののいて声を溢す。


「鳳凰白檀…」


 手下達が、男をおいて逃げだしていった。男はへたりこみながら、口をパクパクさせている。葵はすすっーと移動し、マノーリアと梔子のところに行き、疑問を口にする。


「鳳凰白檀って?」

「アニキの二つな、現在では唯一の加護持ち、女神の眷属神、鳳凰の加護持ちよ、アニキは」

「加護持ち???」


 梔子の説明では、葵は理解できなかったので、マノーリアに説明を目で要求する。


「葵くんね、最高神アマテウス様には、眷属神がいるの。さっき話した、ウズメ様と…」


 マノーリアの説明では、守星大戦の伝説には、女神の眷属神は、6人いた。

 女神の代行者・ウズメ→最高神に代わり、邪神を封印し、世界を復興に導いた。

水の女神・サヨリ→海の創造を担当し、守星大戦時に一部の魚類と海洋哺乳類を亜人かし、海洋人種マーメイドとアクアノイドを生み出す。海に結界をはるため姿を消した。


土の神・デイト・ア・ボッド→大地の創造を担当し、守星大戦時にドワーフを生み出す。戦えない人々を護るために、山脈を創るために、姿を消した。


火の神・鳳凰→火の創造を担当。守星大戦時に、邪神に殺されてしまう。東の山脈に、鳳凰の願いが宿るマグマの池があるとされる。

精霊の女神・エーテル→植物の創造を担当し、守星大戦時にエルフを生み出す。植物を護るために姿を消した。


空の神カーラス・テノーグ→空の創造を担当し、守星大戦時に翼有人種エンゼルとハーピと八咫烏を生み出すが、邪神によって滅ぼされる。


各眷属神の加護得ると、眷属神の力を授かり、人並み離れた力が得られる。眷属神の試練と言う儀式があり、白檀はその試練に挑み、鳳凰の加護を得た。シルドスピア防衛戦で、試練を終えた、白檀が駆けつけたことにより、魔族を退けた。その時についた、二つなが鳳凰白檀であった。


「加護持ち…団長って相当強いんだ?」

「自他共に認める世界最強の騎士ってことになっている」


梔子は、実の兄の話に恥ずかしいのか、自重ぎみに話す。白檀とベルガモットも近づいてきて、話に加わる。


「葵、さっきの術は、なんだったんだ?」


ベルガモットが訪ねる。


「全部、ウソです」

「はっ?」


ベルガモットが目を丸くする。隣にいた、マノーリアも手を口におき、小さく驚く、梔子は呆れた顔をしている。


「だから、全部ウソです。術なんて、かかってないですよ」

「ハハハ!お前、あの状況で、あれだけのウソをつけるなんて、なかなかやるな?面白いヤツだ。けどよ、あんな事しなくても、お前の剣術であれば、普通に倒せたんじゃないか?」

「ムカついたんで、バカにしてただけです。途中で自分でも笑いそうでした。」

「ハハハ!いいね~!合格!合格!葵はもう、うちの騎士団入団決定!」

「良いんですか?こんなんで」

「おもしろいやつ、いないとさぁ~つまらないだろ?真面目担当はマニーがいれば充分だ」

「白檀お兄様が、そんなだから、副団長が調整に手を焼いているんですよ!」


マノーリアが口を尖らせ、白檀に詰め寄る


「だが、お前だって賛成だろ?そもそもこの決闘を吹っ掛けたのは、マニーだろぉ~!」

「それは、そうですが…」

「なるほど、マノーリアが決闘をけしかけたのは、輩を懲らしめて、葵に手柄を与えて、推薦する為、だったのか、喰えぬヤツになったな」

「ベルガモットお兄様まで…」

「今度、マニーには、なんかしてもらおうかなぁ?俺も担がれたから」

「葵くんまで…意地悪言わないで!」

「冗談だよ!あっ!ベルガモット団長、あなたの命、お返しします。ありがとうございました。」

「葵、もしよければ、その剣を受け取っては、貰えないか?中古で悪いが、騎士になるには、剣が必要だろ?」

「良いんですか?素人の俺が見ても、高価な剣ってわかりますけど…」

「かまわんさ!いくつかある剣の一つだ、あの輩は、この辺を取り仕切る商家の次男でな、この区の民は、逆らう事ができなかった。騎士も理由なく、手も出せんからな、現行犯で押さえるしかなかったが、あやつもズル賢くてな、騎士や本物の冒険者ハイランカーが、周りにいる時は、おとなしいのだ。たがら、これは民に代わり、礼の品だ、遠慮せず、受け取ってくれ!」

「ありがとうございます。」


葵は、騎士見習いになることを認められ、更に剣を譲り受けることになった。このよる白檀に、付き合わされて、夜中まで酒をつきあわせられるのであった。葵はかなり深酒をし、どう部屋まで帰ったのか、覚えてない、そして朝がきた。


「あ~!いてて…二日酔いか?…団長…酒強いなぁ~」


その時、ドアがノックされる。


「葵くん、おはよう、朝ですよぉ~おきてますか?朝食ができてますよ~開けますよ?」

「マニー、おはよう。マノーリア?」


マノーリアは、葵の部屋に入ったところで、赤面しフリーズしている。葵はマノーリアの態度の理由に気がつく、自分が何も着ていないことに。昨日酔って、着替えるのがめんどうくさくて、着替えなかった。パンツまで脱いだのは、酔っていたのだろう。マノーリアの事だから、亡くなる前のお父さんの物しか、見たことないだろ…ベルガモット団長のも見たことあるんじゃない、子供の頃か?と、どうでもいいことを考えつつ、マノーリアが再起動する前に、そっとパンツだけはき、マノーリアに、何もなかったかのように、声をかける。


「おはよう~朝ごはん何かな?楽しみだなぁ~」

「葵くんのエッチ~!」


葵は、マノーリアにビンタをされた。異世界に来てまさかの、国民的いや世界的に、有名な、あのドラちゃんのヒロインがここにいるなんて、しかしあちらは、未来の道具を使って、シャワーシーンに遭遇するのではないか?考えてみれば、この場合、葵が「マノーリアさんのエッチ~!」って言う立場ではないだろうか?何か不条理な気がする。どうせビンタされるなら、葵もシャワーシーンか着替えシーンを事故的なシチュエーションで見てしまうのがいいなぁ~と左頬の痛みをこらえながら、身仕度を整え、食堂に向かう。葵以外は、全員揃っており、白檀が腹を抱え爆笑している。マノーリアは、未だにむくれている。葵は白檀の隣に座り、声をかける。


「おはようございます。団長…笑いすぎですよ…」


白檀は、葵を一別し、あいさつを返そうとしたが、手の平の跡に腫れた、左頬を見て、笑いが耐えられなくなる。


「おは…ブッ!ハハハ!」

「だから!笑い過ぎですよ!」

「わりい~!わりい!かぁっかぁっはぁーぁ」


白檀も笑いをこらえようと、声を意識的に抑えようとしている。


「いや~!やっぱり、お前おもしれーな」

「俺、なにもしてないですよね?」

「マニー、まぁ~事故だ、気にするな!クー後よろしくな!」

「アニキずっる~!マニー本当に気にしなくていいよ。男が家にいれば、良くあることだし」

「そ、そいうけど…葵くん兄妹じゃないんだよ~!」


マノーリアが思い出したようで、また、頬を赤く染めている。さっきよりは、赤みが抑えられている。落ち着いてきたようだ。クーや他の女性騎士のフォローにより、マノーリアも落ち着いてきたようだ。騎士団は朝食を済ませ、そのまま、ここで朝の朝礼をするようだ。葵は白檀から、騎士見習いとして、入団することを紹介される。しかし、使節団としてきているので、各部隊隊長と選抜された騎士しかいない為、ロスビナスに戻り、改めて紹介があるようだ。葵は日本人で魔法を使用できない為、特例扱いとされ、マノーリアが教育係となり、梔子が副担当となる。定期的に、白檀が直接育成度合いを確認し、正式に騎士となれるか判断することとなった。


「マニーとクー!今日はふたりで、葵のめんどうを見て、どう教育するか確認してくれ。葵!ここからは冗談なしだ、しっかり励んでくれ、剣術も気概も充分あると、俺は思っている。後は、お前自身が、どこまで登りつめるかだ。それは、お前が決めることで、他の誰かが、何かを言う権利はない。お前が、やっていることに、何かを言うヤツがいれば、言わせておけ!相手にしなくていい、足を引っ張るヤツなら、わからせてやれ!明日辞めても、一生涯続けるのも自由だ。必要なことは、今日死ぬかもしれない仕事だ!悔いを残すな!悔いが残らないなら、毎日、遊んでいてもかまわん…金があればな。だが、命令は絶対だ!俺たちは国と民を護る為にいる。遊んでいれば、いつか死ぬ。いつ死ぬかを決めるのもお前だ。人生一度きりだ。自分の人生こ全てを楽しめるようになれ!」


マノーリアと梔子は敬礼し、命令受諾の意を現す。葵もふたりの真似をし敬礼する。晴れて、ロスビナス騎士団騎士見習いとして歩むこととなる。

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