第3話 宇津瀬美玖の前世

 私は、市場に向かうため父が運転する貸し馬車に揺られながら昔にふけっている。

前世の自分がどうやって生きていたか昨日のことのように思い出せる。


 美玖は、52歳の独身女性だった。母は幼い頃に他界、父は2年前に他界していた。

自身で安い中古マンションを購入し、猫1匹と暮らしお金はなくとも優雅な独身貴族を謳歌していた。


 美玖の前世はあまり、楽しいと言える人生ではなかった。

早くに母を亡くしてからは明るかった性格も影を潜め、いじめに合うようになった。

容姿も勉学も秀でたものはなく、高校を卒業してからは普通の会社員として仕事をしていた。

根が明るかったり、物事に対して細かくなかった性格もあって一人でもなんとなく生きてはいけていた。

 ただ、やはり一人で生きて行くのはつまらなかった。たくさんの友人と家族に囲まれた生活を望んでいたが、恋愛も友人関係もうまく行かなかった。

そんな人生だった。


どうやって死んだのか…。その辺は記憶が定かではない。


 ただ、置いてけぼりにしてしまった猫はその後どうなったのかとても気になる。

一応、数少ない友人には、自分が死んだら猫のことをお願いはしていた。可愛がってもらえていると信じたい。

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異世界転生したら、なんか詰んでた ~精霊に愛されて幸せをつかみます!~  旧題『50代で異世界転生~現状はあまりかわりませんが…』 桃野もきち @saran21

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