発達心理学

 ADHD(多動性障害・注意欠陥多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)などの名称は聞き馴染みがないだろうか。「発達障害」と言われて多くの人が想起する症状名だろう(発達障害には他にも学習障害やチックなどといったものも含まれるので上記二つだけを『発達障害』だと捉えないように)。


 発達心理学はこれらの障害を専門に扱う領域……ではない。


 その名の通り、人の成長、加齢に伴うライフステージの変化について扱う心理学である。

 昨今までこの分野は乳幼児や青少年の心の変化について扱うことに多くのリソースを割いていたが、最近は「隠れた大人の発達障害」などというフレーズの元に成年期、中年期、さらに「終活」という言葉に伴い老年期にも注目している、まさに「生涯」を扱う心理学である。


 先述の発達障害についてこの分野が言及するのは、乳幼児の発達に何らかの異常が見られる場合、青少年、あるいは成年期の人が自身の社会性に何らかの違和感を覚えた場合、に限られる。


 本来の領分は「人の成長に伴う内面の変化について扱う」ことなので障害に限らず例えば「青年期に夢中だったものに大人になってから夢中になれなくなった」だとか「そろそろ死が身近になった年齢なので身支度を済ませたい」などといった加齢に伴う心の変化も守備範囲なのである。


 本分野を語るに当たって避けて通れないのがエリクソンの発達段階についての言及だろう。筆者としては、この研究はやや古い研究なので、もう少しアップグレードされてもよさそうだとは思うが、しかし発達心理学と聞いて多くの心理学関係者が想起するのはやはりエリクソンだろう。

 彼は「アイデンティティ」という言葉や「ギャングエイジ」という言葉を産み出した研究者なので時間があれば調べてみてもいいかもしれない。彼の提唱した発達段階における心理的変化は長くなるので省略する。乳児期から老年期まで八段階の心の変化をまとめている。


 例えば、少年から青年になる時。例えば、青年から大人になる時。若年から中年へ、そして老年へ。

 心が変化していくことは避けられない。

 そんなステージごとの変化に手を差し伸べる。


 あるいは、自分の子供がどのような変化を辿るか。自分の親が、家族が、どんな心の状態にあるのか。

 それを知りたい時に役に立つ。


 それが発達心理学である。

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