第7話

 バンドに加入しての初合わせが終わった。

 私、琴葉は弾き語りを中1の時から、ベースを高校入学からやっていた。

 正直目標なんてものはなくて、ただ弾き語り動画を上げた時の反応が嬉しいから、ベースを弾くのが気持ちいいからやっていただけだった。

 だから今日みたいな事が起きるとは思ってもいなかった。


 三人の楽器が出す音が、私の歌が、一つの曲になって奏でられる。なんと気持ちが良いのだろうか。


 私は高校から女子校に通っているのだが、ふと中学生の一時期を思い出した。あの時は友達とアコギとカホンでバンドごっこみたいなことをして遊んだ。とても楽しかったのを覚えている。

 しかし今日会った二人とはバンドの仲間として、心を通わせられると思った。まだ言葉も数えるほどしか交わしていないが、このバンドは間違いなく私にとって大切な存在になる、そんな予感があった。


「良かった、よね、、!」

 初めての演奏が終わり少し放心状態の二人に声をかける。

「うん、すごい良かった!」

「なんというか、心が震えたな」

 瑞季は少し興奮している様子だ。しかし3人ともそれ以上の言葉を口にしようとはしなかった。私もそうだったが二人も今この瞬間を、この余韻を噛み締めているように見えた。


 その後は三人でセッションをしたり共通して知っていた名曲たちを一緒に歌ったりして残りの時間を過ごした。

 話もたくさんして、画面越しでしか知らなかった2人のことをよく知れたように感じて嬉しかった。



 それから数日経ち、二学期が始まった。

 通学の電車に揺られ、外を眺めている。イヤホンからは私がベースを始めたきっかけのアーティストの曲が流れてくる。いつか彼女らのように自分たちの奏でる音楽を、多くの人が聞いてくれるようになればいいのにな、とふと思った。


「琴葉ちゃん、おはよう」

 友達に話しかけられ、イヤホンを外す。瑞季と奏に曲を世に出さないか相談してみよう、とだけ考え友達の話に耳を傾けた。

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