第14話 猛獣使いを求むわ・・・

あれから、魔力を流して属性魔法の所得をみんなで試みたわ。

子供の私に圧をかけてくるナッターズ侯爵に先ず流して、一回で要領を得た彼は魔法団の人たちに試し、数回魔力を流されて要領を得た魔法団の人たちが、今度は一般の人たちに魔力を流す。そんな感じで私が行ったことは、最初のナッターズ侯爵に魔力を流すだけだったわ。

そして、大人たちがそんなことをしている間に、私たち子供だけでやってみたの。ま、暇だったということもあるわ。子供が黙って待っているなんて、出来ないことよね。そんな私たちは、魔力を流したり、流されたりして楽しかったわ!

そしたら、覚えてない属性の魔法を得られたの!みんなもよ!

それで、わー!わー!きゃー!きゃー!してたら、魔法団のおじ・・・お兄様たちに「何故、そんな意図も簡単に覚えられるんだ」とジト目で見られたわ。年齢が低い方が覚えやすいと言うだから、そんな目で見たってしょうがないわよね~。と思っていたのだけど、適性がない属性だと得られないって後でナッターズ侯爵に聞いたのよ!でも、それも年齢によるのだと私は思うのよ。年齢がいって覚えづらいのなら、回数を増やせば覚えられるのじゃないかしらね。そう私が言ったらナッターズ侯爵は、「検証あるのみだね~。試してみるよ~」と言っていたわ。皆さん、健闘を祈るわ!


そんな属性魔法を取得した私たちは、なんと色んな魔法を実際に放つ練習よ!


「はい。では、ファイヤーボールを自分の前にある的に向かって射ってみましょう。先ずは極力小さい物でお願いします」


等間隔に一列に並べてある的に向かい合うように添って、ある程度距離を取って一般の大人に混ざって私たち6人は並んでいるわ。ジュリアンナ含む他の子供たちは、訓練場の端の方で見学しているの。その私たちに、魔法団のお兄様たちの一人が真面目にそう説明したわ。


「始め!」


『ファイヤーボール!』


そんな魔法団のお兄様の掛け声で、みんなが一斉にそれぞれの大きさのファイヤーボールの魔法を的を目掛けて放ったわ。私もなるべく小さくしたの。でも、極力小さい物と言うわけだったけど、みんなが放ったファイヤーボールの大きさはまちまちで違かったのよ。殆んどはソフトボールや野球ボールくらいなの、その中にパチンコの玉くらいの小さい物が6つよ。もちろん、その6つは私たち子供の物よ。今までの訓練の賜物ね。遊んでいただけなのにね・・・。

ファイヤーボールが当たった的を見てみると、大きさが関係なく焦げ付き方も薄かったり濃かったりとそれぞれ違かったの。私は圧縮したイメージをしたから、この中では1番濃い色の真っ黒だったわ。


むふっ~。私のが1番濃いわ!


「う~ん。このやり方だとつまらないよね~。上達するのに時間がかかりそうだしね~」


脇の方で黙って様子を見ていたナッターズ侯爵が、突然そんなこと言うのよ。そして、私たちの前まで来ると、直径1メートルくらいの大きさの木製の球体を作って、その回りに卓球の玉ほどの大きさの無数の穴があいた水のシールドを、包むように施したの。けど、何故それを作ったのかしら?大人たちは「無詠唱だぞ・・・」「あんなこと無詠唱で・・・」とか驚いているわ。


「じゃ、この中にある木を、みんなで燃やしてみようか~」


ナッターズ侯爵がニコリとそんな事を言ったわ。でも、いつもの事なのか魔法団のお兄様たちは、「団長の無茶振りキター!」という感じで顔がひきつっているの。私含め他の人たちは、彼の言っている意味が分からずポカーンとするだけだったわ。


「はい、通訳します。団長は水の中にある木を、ファイヤーボールで水に当たらずに燃やして欲しいということです」


一足先に我に返った先ほど仕切っていた魔法団のお兄様が、ナッターズ侯爵の通訳を名乗り出たわ。

ナッターズ侯爵は、その球体を少し上に上げたわ。あ!みんなで囲んでファイヤーボールを放ったら、向かいにいる人は外れ弾に当たって大怪我するわよね。普通の時は気遣い出来ないのに、魔法に関することになると気遣いが出来るのね~。

大人たちは「そんな事が出来るのか?」「いや、無理だろ」とかごちゃごちゃ言っているけど、面白そうよね。ほら、カーティスたちも目を輝かせた始めたわ。


「では、わたしからいくよ」


そう言ってルーカスが右手を前に突き出すと、無詠唱で小さなファイヤーボールを球体に放ったわ。

でも、それは水のシールドを抜ける前にシュッと消えてしまったの。大きさは問題なかったはずなのに火の威力が弱かったのかしら。そんなファイヤーボールを見て、眉を軽く寄せルーカスは残念そうにしているわ。


「じゃ、つぎはおれだな!」


今度は、アンドリューが両手を腰に当てて胸を反らしながらそう言ってから、大袈裟にその手を頭上にかがげて前に振り下ろしたわ。

アンドリューのファイヤーボールは、ルーカスのを見て火の威力を高めたみたいだけど、その分大きくなって水のシールドに当たって消えたわ。大きさは穴と同じくらいだから大丈夫だと思ったようだけど、大きさが同じ所に同じ大きさの物を通すって難しいわよね。アンドリューは、これまた大袈裟にショックを受けているわ。


「こんどは、ぼくがやります」


次にカーティスが右手を上げる。そして、両手を前に突き出したわ。

カーティスのファイヤーボールは、大きさも火の威力も良い感じではないかしら。でもそれは、穴を通って木の球体に当たり、軽く焦がす程度で終わったの。少し残念そうに、カーティスは笑ったわ。


「では、つぎはわたしがやります」


エドワードがスーっと流れるように右手を前に突き出したわ。

エドワードのファイヤーボールは、ブレずに真っ直ぐ穴を通り抜けて当たったけど、カーティスのよりは焦げていないわね。でも、スピードがとても遅いわ。実際に、敵に放つ時だったら簡単に避けられると思うの。終わってエドワードは、表情を崩さなかったが満足そうに頷いたわ。


「ん」


今度は、デュランがそう発しただけで、怠そうに両手を前に突き出したわ。

デュランのファイヤーボールは、大きさも威力も申し分なく、スピードも速くビューンッと穴を通り抜けて球体に当たったわ。1番大きく焦がしているわね。流石、魔法団の団長の息子だわ。


「あい!わてゃてぃにょびゃんでぇしゅわ!」(はい!私の番ですわ!)


次は私よ!右手を上げて主張しましたわ。1番小さいから、分からなかったら困るもの。

みんな、大船に乗ったつもりでいて欲しいわ。このアリアルーナが、みんなの敵を取ってやりますわよ!

先ずは、ファイヤーボールを作って、小さく小さく圧縮して・・・あっ中の空気を抜くようにすれば、隙間なく火がいっぱいになって、もっと火の威力が上がるわよね。あら?なんか、火の色が青くなってきたわ。そういえば、火の色が青い方が温度が高くなるのよね・・・まぁ、良いわ。程よい大きさになったから、放ってみようかしら。


「あい!」(はい!)


あ、ちょっと穴の位置からズレてしまったわ。ちょいちょいと、右側に軌道修正しましょう。ほっ、上手く通り抜けたわ~。あら?あら?あららら~?ファイヤーボールが、木の中に入ってしまったわ。どうしましょう・・・あ、入っていった穴から煙が出てきたわ!今度は、徐々に黒く炭みたくなってきたわね。なんと!全部、真っ黒になってしまったわ。


「ルーナ嬢?」


いつの間にか側に来ていたナッターズ侯爵が、怖い笑顔を浮かべて見下ろしていたわ。

私、何かしたかしら?


「何故、ファイヤーボールが青い色なのかな?何故、ファイヤーボールが軌道修正するのかな?何故、ファイヤーボールが木の中に入っていくのかな?何故、あんな小さなファイヤーボールが木を真っ黒にしちゃうのかな?」


ナッターズ侯爵が私の目線を同じ高さにしゃがむと、顔を近付けて圧をかけてくる。


「あ、あっちゅきゅちちゃじゃきぇじぇしゅわ・・・」(あ、圧縮しただけですわ・・・)


「火を圧縮?」


「あ、あい・・・」(は、はい・・・)


「そうか、そうか、そうか・・・」


ぶつぶつと何か言いながら、真っ黒になった木の球体と水のシールドを消して、また新しい物を作ったわ。


「じゃ、今度は、大人組がやってみようね~。一斉にみんながやっても良いよ~」


みんながいる方を顔だけ向けて、彼はそう言ったわ。

仕事しましょう、ナッターズ侯爵・・・。


「ルーナ嬢、詳しく」


それから説明したわ。ファイヤーボールの中の空気を抜くようにとか、ズレたのでちょっと右に移動するように願ったこととか、他にも細々と聞かれたわ。

魔法団のお兄様たちは、私という生け贄が出来てホッとしていたわ・・・魔法のことになると、毎回こんな感じなのね。少しの付き合いだけど、何となく分かっていたわよ・・・でも!お兄様たち!他人に押し付けたい気持ち分かるけど、少しは助けてほしいわ!誰か、この人を止めて~。手綱を引ける人はいないの~?

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