第11話 魔法の先生だわ

 あの後ハンフレイパパは、ベネディクト公爵と話し合ったみたいなの。

 そして、エドワードの能力測定もしたら・・・ま、聞かなくても結果は目に見えてるわよね!全く同じではないけど、私たちと似たような結果だったの。エドワードも、ナッターズ侯爵が教えてくれて色んな魔法が使えるようになったって 、話したみたいよ。

 それを聞いた二人は、慌ててナッターズ侯爵に説明を求めに行ったらしいの。だけど、逆に「そんな結果になったんだ!隣国の魔法研究者の論文読んだら、うちの教育方針と同じだなと思って、試してみたんだよ」と喜んでいたようよ。困った人よね、彼って。

 それで、私たちと一緒に魔法を習っていたデュランも能力測定をしたら、またまた似たような結果になったのよね。ナッターズ侯爵家が代々魔法に優れているって、こういうことなのね・・・。

 それを陛下に報告するため急遽謁見して、ルーカスの能力測定もしたら、またまたまた似たような結果になったのよ。もう、陛下と王妃は大騒ぎよね。で、後日ボールドウィン侯爵家も含めて、話し合うということで帰って来れたみたいなのよ。

 そんなこんなで、やっと帰ってきたハンフレイパパは、精神的に心底疲れた感じだったわ。癒してあげようと思って、ぎゅっとしてあげたわ。そしたら、逆にぎゅっとされて、なかなか離してくれなくて、カーティスもマリアンヌママも巻き込み、ぎゅうぎゅう逆押しくらまんじゅうみたいになったの!苦しかったけど、楽しかったわ!!

 でも、ナッターズ侯爵の、「うちの子たちだけじゃなくて、違う子にも試したらどうなるのかな?」と、面白がって私たちにいろいろ教えてくれたお陰で、私たちの能力が一般より多くなったらしいのよね・・・でも、まぁ、教えたというよりは、実験や研究に使われたと言った方がしっくりくるわね。モルモットになった気分だわ~。呆れて言葉も出ないってこのことを言うのね・・・あ、言葉出てるわね。

 それでその後日になって、アンドリューのボールドウィン侯爵家も王宮に呼んで、更に話し合ったのわ。あ、アンドリューの能力測定の結果も、私たちと似たような結果だったらしいわ。それに侯爵も驚き過ぎて、なかなか話し合いが進まなかったみたいなのよ。そのせいで、別室にいた私たちは、なかなか迎に来ない両親を待ちくたびれて、室内でも危なくない魔法で遊んでいたわ。

 ま、親たちは、今回のことは、自分の子供たちの能力が飛び抜けて凄いという嬉しさよりも、面倒ごとが起きそうで困るという思いで、複雑だったみたいよ。

 それでね、唐突だけど、魔道具の説明をするわ。魔道具には魔石が付いている物と付いていない物があるのよ。魔石が付いている魔道具は、それを媒体にして使えるの。魔石が付いていない魔道具は、自分の魔力を糧にして使うよ。

 なんでこんな話をしたかというと、ナッターズ侯爵の話では、その魔石が付いていないそれぞれの属性の魔道具の方を、毎日数回使わせて体に覚えさせ、属性魔法を身に付けていくのだと言っていたわ。私たちに魔道具で遊ばせていたのって、この為だったのね。普通は、魔石が付いている方を子供には使わせるみたいなの。それで、年齢が幼いほど覚えるのが早く約1ヶ月から2ヶ月の時間を要し、10才からだと5倍くらいの時間に伸び、年を取るごとに伸びていくらしいの。大人は、毎日その魔道具使って覚えるようとしても、早くて10倍以上の時間がかかるらしいわ。ナッターズ侯爵が自分や使用人などで検証していたみたいよ・・・。

 スキルも大体同じ用量で、何回も同じ事を練習することが大事みたいだわ。ひたすら魔法攻撃を回避とか、ひたすら物理攻撃をするとかね。私たちは同じ事をずっとやっていた訳じゃなくて、それらを組み合わせてやっていたから、ただ遊んでいると思っていたわ。ナッターズ侯爵ってなんていうのかしら、教え方は上手だけど、自分の欲望には正直よね。

 それで、陛下は決断したのよ。貴族も平民も関係なく、本来魔法を教わる年齢より下の者たちにも無償で教えることと、全ての年齢を対象に、魔法の教え方をナッターズ侯爵形式に変えることを、よ。

 そしたら、みんな能力の数が同じくらいになって、私たちが目立たないんじゃないかっていう話と、国全体の底上げになるのではないかという話になったらしいわ。

 あ、無償だけど、ある程度魔法が使えるようになったら、仕事も併用して行っていくみたいだわ。難しくない危険がないものらしいわ。空になった魔石に魔力を注ぐとか、王都や地方での様々な依頼のうち簡単な雑用を魔法を使ってやるとかね。

 そんなことを、ハンフレイパパとマリアンヌママが丁寧に説明してくれたのよ・・・ナッターズ侯爵に振り回されて、大変だったにね。ホントお疲れ様でしたと思うわ。ご苦労様だわよね。

あ!私も被害者の一人だわ!!


「りゅーにゃちゃま!」(ルーナさま!)


「りゃあちゃま!」(リアさま!)


 そして、今日からジュリアンナと、魔法の練習なのよ!

 王都や各地方に、魔道具と共に魔法を教える人を派遣することになったのよ。そして年数回、魔法大会を行うらしいわ。

 最初は、王都に呼んでという話になったみたいだけど、実際は無理な話よね。宿泊する所の確保や滞在費などの金銭的な問題、全国から来るのだから数百人、下手したら千人を超える可能性だってあるわ。それに、その人数の人たちをどこで教えるの?っていうことになるわ。

 話し合いが揉めて揉めて、最終的に派遣という形になったの。でも、派遣された人たちが地方に左遷になったと思って、ちゃんと教えなかったり、手を抜いたり、全員にきちんと教えなかったりしたら大変だから、魔法大会を行うことになったみたいのよ。日本と一緒で戸籍みたいな『記録書の出生覧』というものがあるから、それを参考に名簿を作って、魔法を習いたかったのに習えなかった!と言う人がいないようにするみたいなの。この国で産まれたら、出生届を出さなくてもお城にある記録書という水晶に記録されるらしいわ。他の国に移住したりとか亡くなったりしても届け出を出さなくても記録されるみたいなの。不思議よね・・・昔いた大賢者が作ったらしいわ。その『記録書にある出生覧』って『エレセイ』のゲームにもそんな設定あったわね・・・ヒロインのエレノアとルーカスの出会いよね。国の記録書にある出生覧を元に学園入学の案内状を送ったが、入学ギリギリになっても来ないくて事故か病気かと学園の者が心配していたら、ルーカスが新入生代表として挨拶のため壇上で話している時に、エレノアが息を切らして扉をバンッと開けて入って来るのよ!そして、二人は目が合って数秒見つめ合うの!!キャ~。そしてエレノアは、皆に注目される中、何事もなく空いている席に付くの。内心はドキドキバクバクで、後で怒られるかもと焦っているのだけどね。その動じない凛とした姿にルーカスが興味を持つのよね~。もう、運命よね!遅れた理由が、エレノアの子爵家は領地が田舎過ぎて案内状が一週間前に届いたみたいなの。休憩しながらだけど馬車で片道10日かかるのによ!でもエレノアは、馬車で行くより馬を走らせた方が早く着くと考え、制服と必要最低限の荷物を持って、準備そこそこに休みなく馬を走らせ、慌てて入学式に来たのよ!!

 あっまた話が反れちゃったわね。それでね、確認のための魔法大会もするけど、なんかね、不正が起こらないように、魔道具も開発しちゃったみたいなのよ。身代わりが出来ないように本人の確認や証明が出来て、魔法の練習の成果が分かる物とか、テレビ電話みたいな通信機器とか・・・私がアドバイスしてだけどね。これからまだまだ開発される物が出てくる予定よ。私がポロっと失言したとはいえ、幼女にこんなことさせるって世知辛い世の中よね、フッ。


「ちょーきゃりゃ、おにぇぎゃいしましゅ」(今日から、お願いします)


 ジュリアンナがペコリと頭を下げるの。そして、それに私は頷いたわ。


「あい!」


 ふっふっふー。そう、ジュリアンナに魔法を教えるのは、私なのだわ!

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