戦争の定義と正当性

 戦争とはどういうものでしょうか。

 暴力や喧嘩との違いは何でしょうか。


 暴力事件は各国が対応する権利と力を持っています。事件を犯罪として裁くことができます。

 ところが戦争だとそうはいかないようです。


 定義から考えると、戦争とは、宣戦布告が行われてから講和条約が結ばれるまでの、国家間の武力衝突のことをさします。戦争中の国には戦時国際法が適用されます。

 しかし宣戦布告が行われないまま武力衝突が起きることや、国家であると認められない勢力が参加しているケースも多いので、これはあまり現実に即しているとはいえなくなってきました。


 多くの武力行使は、それに正当性があるかどうかが一つの判断基準になっているようです。

 他勢力による侵略に対する防衛戦争であれば、武力行使の正当性が認められます。同盟国が攻撃を受けた場合に戦闘に参加することも、概ね認められる傾向にあります。


 戦争の定義が重要視されるのはこのためでもあります。その武力行使は正当なものか、ということが問われているのです。

 たとえ本音が自分の利益のためだとしても、正当性を主張することは今や不可欠です。


 たとえばアメリカは、対テロ戦争だと称して、中東で武力を行使してきました。これは自国がテロにより脅やかされているということを理由にして正当性を確保しようとしていることになります。


 冷戦期には、アメリカは共産圏との戦いだと称して、朝鮮やベトナムなど各地で熱戦を繰り広げました。これは世界に共産主義が広がることにより自陣営が危機に陥るということを理由にしています。


 ところがベトナム戦争(1955〜1975年)では、アメリカ国内の世論が反戦を呼びかけ始めたことが、アメリカの撤退の一因になりました。正当性の確保に失敗した事例といえるでしょう。


 国際世論や国際連合からの非難を浴び、軍が撤退した例も存在します。スエズ戦争(1956年)がそれです。

 エジプトがスエズ運河の国有化を発表したことに反発したイギリスとフランスが、イスラエルを味方につけてエジプトに進軍したのですが、これが非難を受けたので、三者は撤退を余儀なくされました。


 戦争に参加する国にとって、その正当性を主張することによって国内外の世論の支持を得ることは、重要な課題であるようです。


 逆に言うと、世論には戦争を阻止する力があるといえます。一人一人が平和を祈念することは、決して無駄ではないのでしょう。

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