二人目の元カノ登場

第15話 もう一人の元カノ

 俺には渚の他にもう一人元カノがいる。

 彼女と付き合っていたのは中学二年の一年間だった。

 当然、彼女も同じ高校に通っている。

 クラスが違うから滅多に会うことはないが、その日はたまたま遭遇した。


「今日は恵が当番だったのか」

「宗一君・・・・・・お久しぶりです」

「久しぶりだな」


 放課後、図書室の貸し出しカウンター。

 そこに座っていたのは西野恵にしのめぐみ

 俺の元カノだ。

 三つ編みにされたツインテール。

 茶色の瞳。

 いかにもインドアだと分かる真っ白な肌。

 綺麗に整った顔立ち。

 恵は本を読んでいた。


「元気だったか?」

「はい。元気でしたよ。宗一君は?」

「まぁ、ぼちぼちだな」

「そうですか」


 相変わらずのそっけない態度。 

 付き合っていた時もあまり感情を表に出さなかったが、俺と別れてからはそれがより一層酷くなったように思う。

 恵がこうなってしまったのは俺のせいなのかもな・・・・・・。


「今日はどうされたのですか?」

「たまにラブコメ以外の本を読もうかと思ってな」

「そうですか」

「何かおすすめある?」

「ちなみに何系がお好みで?」

「う〜ん。たまにはミステリーを読んでみてもいいかもと思ってたりする」

「ミステリですか。ちょっと待っててください。何冊か持ってきます」

「俺も一緒に行ってもいいか?」

「はい」


 無表情に頷いた恵と一緒にミステリの小説が並んでいる本棚のところに向かった。

 恵はその本棚からいくつかの本を手早く抜き取った。


「この辺が面白いです」

「初心者でも楽しめそうか?」

「はい」

「ちょっとパラパラと読んでからどれ借りるか決めるよ」

「どうぞ」


 俺は恵が選んでくれた本を受け取って閲覧席に向かった。

 最初の方だけ試し読みして、面白そうなやつを二冊借りることにした。


「この二冊を借りるよ」

「いいチョイスですね」


 にこりとも笑わずにそう言う恵。

 昔なら、少しは口角を上げて微笑んでくれてたのにな。

 

「もう、笑ってくれないんだな」


 俺がそうボソッと呟くと、一瞬だけ恵の顔色が変わった気がした。しかし、それは本当に一瞬だけだった。

 すぐに無表情に戻って「ごめんなさい」と言った。


「なんで、恵が謝るんだよ」

「悪いのは私ですから・・・・・・」

 

 今度は恵の顔にはっきりと陰りが見て取れた。

 なんで、そんな顔するんだよ……。

 悪いのは俺だろ……。


「ごめんなさい。今日はもう帰ってもらってもいいですか」

「あ、あぁ……分かった」

  

 恵のことが気になったが、恵に帰ってくれと言われてしまっては帰るしかない。

 俺は図書室を後にした。


「なんで、あんな顔するんだよ……」

 

 恵と別れる原因は俺だった。 

 俺が恵のことをちゃんと理解してあげれていなかったから。 

 だから、恵から別れようと告げられた。

 謝らなければいけないのは俺の方だ。

 

「また、昔のように本の感想を言い合えるようになりたいな……」

  

 そのためにはちゃんと謝らないとな。 

 次に会ったときに謝ろうと、決意して俺は学校を後にした。

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