第27話 6+1

 ☆  ☆  ☆


「なんて気味の悪い話だ」



男の話を聞き終えたあと、洋太は吐き捨てるようにそう言った。



「作り話のホラーでも、もっとマシなヤツがあるんじゃないのか?」



上着としてはおっているボロ切れで、手のひらの汗をぬぐう。



けれど、男は話終えると、まるで《自分の仕事は終った》というように無言のまま立ち上がり、元の場所にも戻らず、その場から立ち去っていく。



「おい、何なんだよ!?」



無言のまま立ち去る男の後姿に、洋太は怒鳴る。



当然、その返事が返ってくることはなかった。



どこかで、重たい鉄の扉が閉まるような音がした後、目の前に残った五人の男たちと洋太の間に、静寂が訪れる。



意味がわからず呆然として宙を見つめた……。



☆  ☆  ☆


どれくらい時間が経っただろう?



狭い檻の中で何とか体を横にした洋太は、精神的な疲れが一気に押し寄せてきて、この状況の中眠ってしまっていた。



足を曲げたままだったので、少ししびれを感じた。



「いてぇ……」



固い床の上で寝る事は慣れているはずなのに、ギシギシと骨が悲鳴を上げている。



背中の痛みに顔をゆがめて、天井を見上げたときだった。



「あ?」



丸い点が無数にあるように見える。



洋太は何度か瞬きをして、暗闇に慣れるのを待った。



やっぱり、錯覚ではなく、黒くて丸い点が模様のようになってそこにある。



洋太は、思わず天井へと右手を伸ばした。



低い天井に指先が触れる、その瞬間。



天井からのしずくは、ジュッと、何かを焼くような音を立てて、男の体を溶かしていく。



その液体を出す穴は一つではない。



天井一面に、まるでそれが模様であるかのように無数に開いているのだ。



さっきの男の声が脳裏によぎり、ハッと息を飲み、手を止める。



「まさか……」



小さな箱。天井一面の穴。模様のように無数に……。



さっきの話の箱と同じ……?



その考えを遮断するように、洋太は強く首を振って頭から吹き飛ばした。



バカな。



そんなことが実際にある筈がない。



嘘だ。



あの男の話はすべて作り話だ。



頭の中でそう繰り返し、自分に思い込ませる。



けれど、結局天井のその模様に触れることは、できなかった……。

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