【完結】豊穣の聖女な私を捨てない方がいいと思いますよ?あっ、捨てるんですか、そうですか・・・はーい。

西東友一

第1話 get up

「いや、それはちょっと・・・」


 ガシッ


 私はアドルド王子に両肩を鷲掴みにされる。


「なっ、二人の大事な門出だ。ここ一面に花を咲き誇らせて、向こうの畑でできた食べ物を豪華に並べて祝おうじゃないか?」


 アドルド王子は私の肩から手を離し、お城の二階のベランダの手すりに前のめりになりながら、木々や花壇、そして遠くの方にある畑を指さした。


「でも、咲く季節が違う花を咲かせるのもそうですけれど、作物を無理やり発育させるのは・・・」


「俺たちにとって人生で最高の一日だろ?その一日は何物においても代えがたいじゃないか!!それに、見たことも無い素晴らしい景色を見れたら、町のみんなだって絶対に喜ぶ」


「絶対に喜ぶことはないと思いますが・・・だって」


「お前は心配しすぎなんだよ、大丈夫だ」


 再び頼み込むアドルド王子。私は困ってしまうけれど、アドルド王子の中ではもうすでに決定事項のようで、私の話を全く聞く様子はない。


「じゃあ、私のこと好きですか?」


「もちろん!!」


「私がいれば、他に・・・」


「一生に一度のお願いだっ、お前がいれば他に何もいらないっ!!」


 少し急かされている気もするけれど、そこまで言われたら仕方がない。


「わかりました、貴方の頼みであれば・・・」


「よし、じゃあ早速頼むぜ」


「いやそれは・・・さすがに少しは大臣達などと調整を・・・」


「一番偉いのはこの俺だ。俺がいいと言うんだから、すぐにやって欲しい。それとも何か?俺の覚悟がわからないのか?」


 少し機嫌が悪くなるアドルド王子。


(仕方ないか・・・)


「・・・わかりました」


 景色のいいその場所は広大な範囲が見渡せる。城の庭園や、みんなのいる街、そして、遠くに見える雄大な麦畑や野菜畑、草原などが地平線まで広がっている。


(この量はさすがに倒れちゃうかも・・・)


 私は目を閉じ、両手を組みながら意識を集中させる。


「grow up」


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