働く大人の異能バトル

 現代日本のアウトロー社会を舞台に、いまいち勤労意欲の感じられない情報屋の男が、殺し屋の暗躍する案件に身を投じるお話。

 個性的な登場人物が超常能力を駆使して敵と戦う、いわゆる異能バトルものの現代ファンタジーです。
 まさに「異能」の醍醐味を煮詰めたかのような異能の設定に、物語そのものは竹を割ったような勧善懲悪(あかん感じの敵キャラをぶちのめす)であるなど、きっちりエンタメしてくれるところが大変魅力的でした。異能バトルに求めるものがしっかりたっぷり詰まった作品。

 その上で、本作の特色はやはり主人公の造形。ひいてはお話全体に通底する主題でもあるのですけれど、「働くこと(お仕事、労働)」について描かれているところが本当に好きです。
 軸のある主人公はそれだけで魅力的というか、過去の職務経験が現在の彼を(ひいてはその異能さえ!)構成しているのがわかって、何か地の通った生々しさのようなものに惹きつけられます。
 異能バトルといっても決して青くも若くもない、ある種の大人らしいドライさに惹きつけられる作品でした。