第18話 あたたかい

 3学期が始まった。

 冬休みなんて変化なくあっという間に終わっていた。

 辺りは銀世界。太陽の光で雪はキラキラと輝いている。

 雪焼けに気を付けないと、なんて。


 僕はまだみずきさんに返事をしていない。

 まだ伝える勇気がなかった。

 シンプルに考えてはいるが、後はタイミングだけ。

 長引く保留はかえって良くない。

 早く言わないと。

「でもなー」

 肘をついてぼーっとしていると。

「バカ弦大げんた!」

 何かの角で頭を打たれた。

「痛ッ!」

 見上げると、こう姉ちゃんこと柳田やなぎだ先生がいた。

 教科書の角か・・・痛いなー。

「集中しろ!」

「ごめんなさい」

 怒られたし、クラスのみんなに笑われた。

 あーやだな。



 放課後の図書室。

「弦大君、質問」

「何かな?」

 珍しくみずきさんが僕に質問とは何だろう。

「甘いものは好き?」

「甘ったるいのは苦手だけど、普通の甘さなら大丈夫」

「じゃあ、チョコは好き?」

「普通かな」

「なるほどぉ~」

 また、何かお菓子作るのかな?

 試食係なら喜んで。

「ありがとう弦大君♪」

 なんだったのか、この質問。

 考えても浮かばなかった。



 2月中旬のある日。

「はい弦大、さとし!」

「うおっ!サンキュー!」

 僕は優愛ゆめから板チョコを貰った。

 聡はちゃんとした箱のヤツ、ん?なんだこの差は。

「何の日だっけ?」

「はあ?昨日、バレンタインだったでしょ?」

「あー」

 てことは、これは義理チョコ。

 うーん、悪いけど弦姫ゆずきにあげよう。

「優愛、お返しスッゲーのにすっからな!」

「ありがと聡!」

 ん?なんか変だなー。

「なんだか仲良いね?」

「「えっ?」」

 2人はキョトンとしている。

 そして、大笑い。

 意味が分からない。

「弦大には言ってなかったね」

「確かに、忘れてたな」

「えーっと?」

 あれ?まさか、そんなことって。

「いつから付き合ってるの?」

「名探偵弦大、大正解!」

 バカにされた。

「いつの間に」

「あんたがバカみたいに悩んでいた時に、それがきっかけで話している内に、聡から告白してきたの」

 なんという!

「優愛がOKしてくれたから驚いたけどな!」

 聡、良かったな、見習うよ。

「弦大もどうせ本命貰えるんだし、ちゃんと図書室に行くんだよ!」

 あー、本当に貰えるのかな?

 外れたら恥ずかしいなー。


 放課後の図書室。

「はーい、どうぞ♪」

「おぉ・・・」

 うん、ちゃんと貰えた。

 緑のチェック柄の紙包みに赤リボンでラッピング。

「これは、開けた方が良いの?」

「出来れば」

 てなわけで開けてみた。

 紙包みが破れないように慎重に丁寧に包装を解いていく。

 現れたのは白い箱。

 開けて見ると、ふんわりと甘い香りが鼻孔をくすぐる。

「チョコクッキー」

「うん!」

 ただのチョコじゃなくて良かった。

「ありがとう、帰ったら食べるね」

「ふぅ・・・良かった♪」

 安堵するみずきさん。

「トリュフも考えたけど、クッキーの方が良いかなと思ってね」

「分かってらっしゃる」

「えへへ♪」

 これって本命なのかな?

「これって・・・本命?」

「ふぇっ!?」

 驚いてからみるみる顔が赤くなったみずきさん。

 もじもじしてから一言。

「そうだよ」

 あー、なんという。

「嬉しいよ、ありがとう!」

「どういたしまして!」

「お返し、ちゃんとしなきゃだなー」

「楽しみにしてるね♪」


 初めて好きな人からバレンタインのチョコを貰えて、暫くは浮かれてそうだな。

 大事に頂きます。


 本命なら、言うしかないな。

 ちゃんと言おう。

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