第5話 どうだった?

 昼休み。

 お弁当をササッと食べ終えてから、図書室に向かった。

「こんにちはー」

「こんにちは、弦大げんた君!」

 おお、いたいた。

「集合写真撮り終えたらいなかったから」

「うん、限界きちゃって」

「そかそか」

 限界なら仕方がない。

「お昼は?」

「保健室で」

「なるほど」

 だよね、ここは食べる場所ではないからね。

「お昼はいつも保健室?」

「うん、みんなが授業中の11時半には」

「あら早い」

「慣れると午後お腹空かないよ」

「慣れって大事」

「うんうん♪」

 そして慣れは時に怖かったりする。

「ところで、今日はみんなと初対面してどうだった?」

「うん、疲れちゃった」

 だよねー。

「でも、みんな良い人で良かった!」

 高2になっても性格クソだったら嫌でしょ。

「気が向いたらおいでって先生が言ってた」

「了解です!」

 笑顔のみずきさん。良いね~。

「いつも何時に帰るの?」

「みんなが授業終わる10分前にはサッと」

「ふーん」

「ん?」

 言ってみなきゃ分からないよね。

「一緒に下校・・・なんて」

 あれ?ドキドキしてる。何だろう?

「良いよ」

 ドキドキからの安堵。ん?自分おかしい。

「どこかで待ち合わせよっか」

「うん」

 帰り、楽しみだな。



「お待たせ」

「弦大君!」

「花の水やりしてから来ました」

「お疲れ様!」

 花は僕の友達。

 ゆっくりと2人で歩く。

「ねえ?どうして花が好きなの?」

「あー」

 それはね・・・。

「綺麗だから」

「あとは?」

「可愛いとか、見てて癒されるとか」

「そっかぁー♪」

 楽しそうに聞いてくれるみずきさん。

 今言った事も本当だけど、本当の理由は、きっかけは・・・まだ言いたくない。

 話す機会が来ないことを祈るのみ。

 僕にとって、思い出したくないから。

「・・・く、ん・・・」

 真っ直ぐ前を向いていると。

「弦大君!」

「わっ!」

 またやっちゃった。

「ぼーっとしないで!」

「あー、ごめん」

 1日何回かどうしても、ぼーっとしてしまう僕でした。


 駅が近くなる。

 人通りはない。静かだ。

「私はここで」

「迎えくる?」

「うん」

「なら大丈夫だね」

 僕は電車に乗って帰るだけ。

「んじゃまた明日」

「うん、また明日」

 互いに手を振って別れた。

 うーん、名残惜しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る