天国に咲く花々

ゆりえる

天使達のお仕事

 天空のお花畑は、沢山の天使達の遊び場でもあり、教育の場でもある。

 新しい管轄を任された大天使は、赴任地の天使達のヤンチャぶりに呆れ果てた。


 「これ、そんな所で、ケンカするでない!」


 沢山のお花が踏み潰されてしまった。

 地上では、地震と土砂崩れで死者が多数出た。


 「これ、水をやり過ぎるでない!」


 沢山のお花が水分過多で根腐れした。

 地上では、ゲリラ豪雨で倒壊した家屋の下敷きになり死者が多数出た。


 「これ、美しいからといって、花をもぎ取るでない!」


 目立って美しいお花が摘み取られた。

 地上では、美人薄命などと言われていた。


 「これ、まだ咲いていない蕾をもぎ取るでない!」


 蕾の部分を飛ばして遊ぶ天使達。

 地上では、流産や死産が増えた。


 「これ、枯れた花はさっさと片付けなさい」


 天使達は枯れた花と萎れた花には無関心。

 天使達が水やりを忘れて枯れた花以外は

 地上では、人々は天寿を全う出来ていた。


 萎れかけた花の1つに大天使の視線が止まった。

 人並外れて大きく色とりどりの花弁を持つ個性的な花。

 大天使は、地上を見下ろし、その花の主を観察した。


 名作映画を何作も生み出していたが

 引退間近と噂されている大監督だった。

 彼の作品により、人生に影響を受けた人々も多数いた。

 

 「この花は、まだまだ枯らしてはいかんな」


 そう言うと、大天使は、杖を振り、魔法の液体の入ったガラス瓶を出した。

 ガラス瓶の液体を大輪の花の周りの土に浸すと

 見る見るうちに

 うな垂れていた花がまた生き生きと花弁を広げた。


 地上では、大監督が引退間近などという噂を吹き飛ばす勢いで

 興行収入歴代最高の大ヒット映画を制作し

 以後もロングラン上映するような作品をいくつも完成させた。

 人々の心は彼の作品に感化され、温厚な人々が増え、争い事が激減した。


 「大天使様、2つ同時にお花が咲きましたよ!」


 優等生の天使が報告し足を運ぶと

 少し小ぶりだが同じ大きさと色の花が咲いていた。

 地上では、未熟児だったが一卵性双生児の双子が生まれ

 長年子宝に恵まれなかった夫婦が

 やっと幸せに包まれた。

 


   【 了 】

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天国に咲く花々 ゆりえる @yurieru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ